去年(2024年)の年末に「モアナと伝説の海2」(原題:Moana2)を見てきました。エンターティメント性の高い、誰が見ても楽しめる作品だったと思います。ただ、この映画が誰でも楽しめる映画であればあるほど、前作のモアナと伝説の海(原題:Moana)について考えてしまうのです。

 今回は、モアナと伝説の海というアニメーション作品について私が思っていることをお話ししたいと思います。散漫な内容になるかもしれませんがお許しください。

 「モアナと伝説の海」は、2016年に米国で公開(日本では2017年)された、3Dコンピュータアニメーションによるスペクタクル・アドベンチャー映画で、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが制作した56本目の映画です。全世界で大ヒットしました。

 この映画の3年前に「アナと雪の女王」(原題:Frozen)が公開されていて、この映画も大ヒットしました。北欧の架空の国を舞台に、雪と氷を操る能力を持つ王女「エルサ」とそれを取り巻く人々の冒険物語でした。

 

[アナと雪の女王 予告編]

 

 「モアナと伝説の海」は、一転して、南国のポリネシアにあるモトゥヌイという島国に住む、村長(むらおさ)の娘「モアナ」の冒険物語です。

 

[モアナと伝説の海 予告編]

 

 以下にお話しする内容は、ラストシーンの大きなネタバレを含みますので、よろしくお願いします。

 モトゥヌイの人々は、温暖な気候の中で、海と陸の恵みを受けて穏やかに暮らしていました。まるでゴーギャンの絵画の世界のようです。幼い頃のモアナがとても可愛い。足元がおぼつかないので多分1才を少し過ぎた頃だと思います。赤ちゃんのウミガメが、鳥に攻撃されるのが怖くて海に帰れなくて困っているのを見て、モアナは、鳥たちを追い払い、大きな葉っぱで陰を作ってやり、無事にウミガメを海に返してやります。幼くして、モアナの優しい天分が現れています。のちのち、このモアナの天分が世界を救うことになるのです。ウミガメの赤ちゃんを見送っていると、波打ち際の「海」が自在に形を変えてモアナと遊び始めます。「海」が意思を持っているのです。 やがてモアナは、優しく快活で美しい娘に成長します。その頃、モトゥヌイで異変が起こります。魚が全く捕れなくなり、大事な作物であるヤシの実は中身が腐っています。少し変わり者の祖母に導かれて、封印された洞窟に入ったモアナは、かつて大きな船で海を旅していた祖先の幻影を見ます。その後、病に伏して命が消えかかっている祖母から、モアナは緑色の石の形をした「テ・フィティの心」を手渡されます。そして、釣り針の形をした星座を目指して海を進み、そこにいる半神半人の「マウイ」を探し出し、創造の女神であるテ・フィティのところへ行き「心」を返すよう伝えられます。世界は、テ・フィティが心を失ったことによって崩壊の危機に立たされているのです。

 モアナは、サンゴ礁の外へ出ることを禁じている父親に無断で、祖先が残してくれた船で、たった一人で旅に出ます。母親はそっと手伝ってくれました。

 船の操縦方法も知らないモアナは、見よう見まねで船を操って、釣り針の形をした星座を目指して旅を続けますが、嵐に会い翻弄されます。すでに海が意思を持っていることを知っているモアナは「海よ、助けて!」と叫びますが、海は助けてくれません(これも試練だったのでしょう)。気が付くと、モアナはある島の波打ち際に倒れていました。この島には、テ・フィティから心を盗んだ罪で幽閉されたマウイがいました。

 紆余曲折があり、数々の苦難を乗り越えて、マウイとともに旅を続け、いよいよテ・フィティのところに着きました。テ・フィティは島の形をして眠っているはずですが、その島のテ・フィティの形の部分がそっくり無くなっているのです。モアナは困惑しました。さらにそこには、火と溶岩の巨大な化け物テ・カァ」がいて、休む暇もなく二人を攻撃してきます。マウイは、その能力の根源である、神から与えられた釣り針を壊されてしまい無力になりました。ただの人間の娘であるモアナ一人で何ができるのでしょう。その時、モアナは、テ・カァの胸に刻まれている「渦」が、緑色の石形をした「テ・フィティの心」の模様と同じであることに気付きます。モアナが「海よ、道を作って」と静かに言うと、海が左右に分かれて道を作りました(「十戒」のモーゼのようですね)。モアナは静かにテ・カァのところへ歩いて行きます。テ・カァは怒り狂って火のかたまりになりモアナのところへ突進してきます。モアナは恐れることなく、歌うように「怒りを鎮めて。元の姿に戻って」とテ・カァに語りかけます。次第にテ・カァの勢いがなくなり、やがてテ・カァは黒い岩の塊になり目を閉じてモアナを待ちます。モアナは、テ・カァの胸にテ・フィティの心をはめ込みます。すると、テ・カァの黒い岩がボロボロと剥がれ落ちだし、その下から創造の女神であるテ・フィティが現れたのです。それまで黒い不毛の地であった島が、テ・フィティが手を触れると花や木に覆われた美しい島になりました。やがてテ・フィティは、元の自分がいた場所に静かに横たわり、テ・フィティは島になりました。

 結末はハッピーエンドです。

 

 私は思うのですが、創造と破壊は表裏一体であって、テ・フィティの「心」は、人類が持っているべき心であり、それを失った時に私たちの世界は破滅を迎えるのでしょう。

 

[テ・フィティの復活]

 

[映画「十戒 海が割れる場面]

 

※ Xに画像を投稿しました(2025.6.14)。

https://x.com/A4xHEbpzkB44017