まだ、冬風が春にいたずらしてる四月の空の下、ビリーは、おろしたてのキャップをかぶり、僕にほほえんだ。「どうしたんだよ、やけに上機嫌じゃん」探るように聞いた、「実はね…私…好きな人ができちゃったの。
それもね、今までには無い感じなの、なんていうのかしら、例えて言うなら、んー盲腸になってるのに我慢してる感じ!」 「わかりずらいよ、ビリー…」 僕は少しばかり嫉妬めいたものを自分の中に感じた。ビリーとは、もう前世からの幼なじみなのに…。そんな僕をよこめに、「私今から、彼好みの女になる!」そお言って、町の群衆の中に、消えていった。僕はその場に、ただ呆然と立ち尽くした。時間が砂時計のように過ぎていく感覚だった。気付けばその場に1時間近く立っていた。微かな春風が、遠くから聞こえてくる声を運んできた。