今日は先輩の七回忌

 

コロナの影響で、法事は

 

おこなわれなかったけれど

 

昔のアルバムを引っ張り出して

 

久しぶりに見た先輩の写真は

 

少し色褪せて見えたけれど

 

いつもの「先輩」だった

 

いつだったか、高校のバスケ部の

 

同窓会で先輩から聞いた話を

 

思い出した。

 

 

「大手の製薬会社から 

 

花屋に転職したと

 

打ち明けた時に

 

驚かなかったのは僕だけ」

 

と言うけど

 

いつも一生懸命

 

何かをしてたから

 

先輩なら何だって

 

平気だと思ってた

 

「手がぼろぼろに

 

なっちゃうんだよ」

 

恋人の写真をながめるように

 

手のひらをじっと見つめながら

 

先輩は笑ってた

 

本当に笑ってた

 

それは生きていることを

 

誰のせいにもしていない笑顔だった

 

僕も同じように

 

いつか笑いたい

 

この先に続く道にも

 

足跡を残したい。

 

“あじさいは切口を

 

少し火で燃やすんだよ”

 

僕の知らないことを

 

教えてくれた

 

つらくなった時だけ

 

それでも何もないふりで

 

会いに来る自分が

 

少しはずかしかった

 

「じゃあね」

 

別れ際に握手をした 

 

先輩の手のひらは

 

ひびわれてて 

 

とても乾いていたけれど

 

とてもあたたかかった

 

本当にあたたかかった

 

ちょっと枯れかけた

 

気持ちにそっと水をまいてくれた

 

ナイショにしていた

 

落ちこんでること

 

「気付かないわけはないよと」

 

彼の手が言ってた

 

 

僕も笑えるよ

 

きっと笑えるよ

 

自分が生きてることを

 

誰かのせいにするのはやめよう

 

どちらかと言えば

 

やわらかい僕の手が

 

いつか誰かに何かを

 

伝える日が来るように

 

先輩、僕に生きて行く道標を示してくれて

 

ありがとうございました。

 

どうか、ゆっくり休んでください