もう一度、もう一度だけ

 

妻と過ごした街で、彼女と暮らした街で

 

二人で歩いた道を歩いてみたい

 

そう言えば、そんな理由でこの街に戻って来たんだなあ

 

と思い出す。

 

後のことなんかどうでもいい

 

この世は地獄だ。未来なんてありはしない。

 

そう思っていた。本気で。

 

家族を失い、友を失った後、妻まで亡くした。

 

こんな世界に何の意味がある。

 

底が見えない絶望感、耐えがたい人間不信

 

あの頃の僕はそんな人間だった。

 

しかし、1台のスマートフォンから始まった

 

今日まで続いた僕の道。

 

あれから7年・・・

 

随分と長い旅になった。

 

多くの人に助けられ、人の優しさに触れ

 

時には信じたモノに裏切られることもあったけど

 

それでも、それを含めて今の僕。

 

色んな景色を見て来た。色んな人との出会いがあった。

 

その経験がなかったら、今の僕はなかっただろう。

 

うつ病との闘病はまだ続いている

 

だけど、僕の病気を理解して支えてくれる人が今は居る。

 

記憶がなくならない限り、心の傷は癒えはしないけど

 

悲しい思い出の場所を大切な人と訪れることで

 

楽しい思い出の場所に帰れることに気づいた。

 

この世は地獄、と思っていたあの頃の僕に

 

この世界も捨てたもんじゃ無いと

 

伝えたい。

 

現実では、そんなことは無理だけど

 

僕があの頃よりもやさしく笑えば

 

重ねた心の傷もきっと大切な傷跡に変わるんじゃ無いだろうか

 

大切なのは、どこに居る、のではなくて

 

誰と居るかだと、初夏の風に吹かれながらそう思った