子どものころ








近所に小さな駄菓子屋があった。
イラストレーターときどきDIYer
ココロ系ヒトリゴトが好きなブロガー
タナビキミキです。








近所の子どもたちは、
毎日のように駄菓子屋に集まる。
お店には
ちっちゃいおばあちゃんがひとり。
目がよく見えなくてねえ
耳も聞こえないし
お金の計算もうまくできないのよぉ
みんな
そのおばあちゃんが大好きで
目の不自由なおばあちゃんのために
お菓子がぐちゃぐちゃになっているのに気づいた子は片付け
計算が得意な子は小さい子のお菓子の金額を計算しておつりを渡し
おばあちゃんの話し相手になったり
自分の話を聞いてもらったり
実質、子どもたちできりもりしているようなお店だった。
ある日、いつものように駄菓子屋に行くと、
外にある、上がガラスになっている冷凍庫に
子どもが一人、しがみついている。
顔を上げたその子は、アイスクリームをいくつか持って
そのままどこかへ走り去ってしまった。
あれ…?
お金は?
あ、
先に払ったのかも。
その時はあまり深く考えなかった。
でもまたその子は
その後も
アイスクリームを出していたり
お店からこっそり
駄菓子を持ち出したりしていた。
知らない子だったけど、
お金を払っている様子がないので
声をかけてみると
「あのばあちゃん、
全然見えてへんからバレへんし」
と、おばあちゃんの前で平気な顔で言った。
驚いたわたしは
ちゃんとお金払わないといけない、
と言ったけど、
怖そうな子だったから、
その後はあんまり言えずに
何日か過ぎた。
ある日、
お店が閉まっていた。
毎日開いてたのに
珍しいな
寂しいな
と思っていたら
それ以来、お店は閉まったままになって
なんだか
みんなの心に
ポッカリ穴が空いたみたいになった。
しばらくして、突然
お店が開いていた。
大喜びで中に入ると
そこにはおばあちゃんはいなくて
知らないおじさんが
中に残っていたお菓子を
ものすごい安い値段で売っていた。
そして、お店はその日限りで閉店した。
その日は
いつも少しだけしか買えないお菓子が
とてもたくさん買えたけど
なんだかとてもさみしかった。
今になって思うんだ。
おばあちゃんは、
本当は、
目も見えていて
耳も聞こえていて
子どもたちが何をしているか
何を話しているか
全部わかってたんじゃないかって。
手伝ってくれる子どもも
万引きしてる子どもも
みんなを
何も言わず見守っていたんじゃないかって。
悪いことをした子に、
お店のおばあちゃんとしてではなく、
子ども同士でいけないと話し
自分で解決するように
ただ
見守っていたんじゃないかって。
きっとそうしてわたしたちは
たくさんのほとけ様に
知らないうちに
見守られて
試されて
生きているんじゃないかって
そう思う。