「光の帝国 常野物語」 恩田陸 | 流石奇屋~書評の間

「光の帝国 常野物語」 恩田陸



著者: 恩田 陸
タイトル: 光の帝国―常野物語

京都旅行のお供に持っていった2冊の本のうちのもう一つです。
帰りの京都から伊丹へのバス、並びに伊丹空港から羽田空港の道中で読み終えました。

この作品は良いです。
10の連作短編集なのですが、すべての主人公が、特別な力を持つ「常野」から来た人々です。

それぞれの特別な力にまつわる、それぞれの物語であり、一見すると関連性はありませんが、出身が「常野」であるところで繋がっており、それの影響で、微妙な関連性が生まれています。

タイトルにある「光の帝国」は、ある村に集まってくる特別な力をもった人々の生活が時代に翻弄されていく悲劇の物語なのですが、とても心に染み入りました。

そして、最後の「国道を降りて・・・」は、悲しくも健やかな気持ちにさせてくれます。

穏やかで知的で、権力への志向を持たない「常野の人々」。独自の世界観。強烈な世界観を持った作品としては椎名誠氏の「武装島田倉庫」の超常世界が気に入っておりますが、この「常野物語」も負けない程の世界観を持ち、何か物悲しさがあります。