「弱いタイプ」

は、男子にも適用される。

 

小学3年生の時。

 

彼は、とても無口で、でもとても私好みの顔立ちをしていた。

 

色白、切れ長の目、清潔感、品よく頭が良い。

 

彼は、よく言えば、とてもマイペースな人だった。

というか、頑固。

 

なぜ、彼だけが許されたのかわからないけれど、彼は、2学期になっても、夏休みの宿題の絵をしばらく描き続けていた。

 

描いているのは、昼休み。

 

給食が終わり、掃除に備えて、机を後ろに送ってから、昼休みでみんな外に出てから、彼は教室に残って絵を描いていた。

 

いつしか、そんな彼の横に座り、無言で彼が絵を描く姿を見ている私が居た。

 

彼も、始終無言だった。

 

水泳の絵だった。

 

絵の半分が、プールのタイル。

 

その細かいタイルを、一筆一筆塗っていく姿は、私には不思議な魅力に溢れていた。

 

まだ夏の暑さの残る教室。

 

開け放たれた窓から、時折流れてくる風が、一瞬の清涼感。

 

半袖の白いシャツの彼と、半袖のブラウスの私。

 

何か会話をするわけでも、視線を合わせる事も無く、ただ、絵を描く彼と、それを見つめる私。

 

不思議な時間だった。

 

数年後、彼をずっと片思いしていたという女友達に言われた。

 

彼は、私の事が好きだったと。

 

そんな事、感じた事もない。だって、会話も交わした記憶も無いのだから。

 

だけど、ずっと彼を見続けていた彼女は、確信していたようだった。

 

今となっては、本当かどうか確かめるすべは無いけれど、彼は私が隣の席に座り絵を眺めている事を嫌がる事はなかった。

 

言うのも面倒だったのかもしれない。

 

ただ、一心不乱に絵を描く彼と、一心不乱に彼を見つめていた私。

 

それだけの思い出・・・・・・・・・