ふたりのカタチ(櫻葉) *6 | 山風に吹かれた櫻葉へのつぶやき。

山風に吹かれた櫻葉へのつぶやき。

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Hoop*6




程なくタクシーがパークプールに停まり、

支払いを済ませると相葉くんと連れ立って降りた。




「えっ、なに、ココなの?」




予想外、という表情(カオ)を隠さずに相葉くんが俺をまっすぐに見た。




「そ。ココなの。」




なるべくゆったりと微笑んで、

『行こ?』って、歩き出す。




都会の中に急に現れた笹が風に揺れるのを横目に、

恭しく頭を下げるベルボーイの間を通ってフカフカの絨毯に靴を進める。



金色の装飾が施されたスイッチの三角を押し、

柔らかなチャイム音と共に開いたハコの中に相葉くんの腰を押して促すと

自らも乗り込んだ。




高層階にあるレストランに着くと、

話が通っていたのだろう、黒のスーツを着たディレクトールがスッと

一般フロアから死角になるプライベートフロアへと誘導してくれた。




「しょぉちゃん、ココすっごいね、」




俺の肩一つ後ろから相葉くんが小声で話す。




「こちらでよろしいですか?」




ディレクトールが指し示したのは、

テラス席から一段上がった半戸外のテーブル。




テラス席には生成りのパラソルが開き、

フロアには花が浮かべられたウォーターキャンドルが揺れる。


テラスはプライベート空間をうまく仕切るように細い葉の観葉植物が並べられ、

目の前に広がるテラスの空間とその向こうの夜景が、

まるで自分たちしか客がいないような錯覚に陥らせた。




「素敵なテーブルですね、」




ディレクトールに軽く会釈をすると、

『では、』と相葉くんの椅子が引かれる。




「あっ、どうもありがとうございます、」




ディレクトールにお辞儀をする相葉くんを微笑ましく眺め、

相葉くんの次に引かれた椅子に腰をかけた。




俺たちは、シェフのお勧めコースと 

とりあえずビールを頼み、夜景に目をやった。




「雨、上がったね、」




ディレクトールが下がったあと、

相葉くんが嬉しそうに外を指さして言った。




「あぁ、そう言えば。」




見上げると、霧雨を降らせていた雲はいつの間にか薄くなり、

ところどころ雲の切れ間から星が煌(きら)めくのが見て取れた。