前のお話【1】
ハワイで、あの日・・・
昼間、おれと翔ちゃんはそれまで日焼け止めを塗ってたんだけど、「もう焼いちゃう?」なんつって途中でサンオイルに乗り換えたんだよね。
いつものノリで、リハの合間に翔ちゃんが持ち出したサンオイルを奪って背中に塗ってあげるって、塗り始めて。
翔ちゃんも、じゃぁ交代っておれに塗ってくれて。
ハワイにいる解放感と、15周年の記念ライブをできる喜びでテンションあがってて・・・
最初手で塗ってたのを、翔ちゃんの背中に抱きついて、翔ちゃんも向きかえて抱き合うように胸を合わせて塗って・・・
リーダーにキモチ悪がられても楽しくて、楽しくて。
その夜、背中がヒリヒリしてさ。
調子に乗っちゃったなぁ、って思ってたところに翔ちゃんが部屋に来て。
翔ちゃんも背中が痛いんだけど、リーダーのとこ行ったらマツジュンと飲みに出かけちゃっていなくて、にのもマネージャーと買い物に出ていなかったって・・・
なんだぁ、おれんトコ最後かぁ、って思ったけど部屋が離れてたしね。
お互いに、アロエオイルを塗ろうって、翔ちゃんが買って来たやつ持って来て。
じゃんけんしたらおれが負けちゃったから、翔ちゃんが先にベッドに俯せになって。
あんな、まじまじと翔ちゃんの背中・・・見るの、なかなかなくて。
厚みのある、火照った背中に・・・ドキドキしちゃってさ。
「あぁ~、キモチイイ」なんて言うから翔ちゃんの腰に跨ってたおれ・・・
有り得ないのに・・・反応しちゃってさ・・・
喉渇いたね、って、慌てて水を取りに行ったんだけど飲みかけの少ししか残ってなくて、あとは翔ちゃん持参の夜会で飲み残したウイスキー。
冷蔵庫に入れてあったコーラと割って、コップ一杯、飲み干した。
「次~、雅紀の番でーす」ってほろ酔い翔ちゃんに呼ばれて・・・
収まり悪くてやっぱいいって言おうとも思ったんだけど、断るのもアレかなって、素直にベッドに俯せになって。
翔ちゃんの重みが、おれの腰をベッドに沈める。
翔ちゃんの掌が、おれの背中をヌルヌルと滑る。
「ん・・・」
あ、ヤベ。キモチ良くてちょっとヘンな声出しちゃった。
「キモチ・・・イイ? 雅紀・・・」
ドキリ、胸が鳴って、ヤバイ。意識し始める。
ドキン、ドキン、ドキン・・・
翔ちゃんに、聞こえそうで恥ずかしい。
翔ちゃんの手がゆっくりと、腰の上からググッと肩甲骨をせり上がって両肩に流れる。
肩から手が離れてまた腰に戻った時、翔ちゃんの指先が横腹に触れてピクッとなっちゃって、慌ててごまかす。
「ふふふっ!しょぉちゃん、くすぐったいって!」
ドキン、ドキン、ドキン・・・
「ワリィ、ワリィ!」
軽い言葉に反して、その指の流れが優しくて・・・
何度となく腹筋に力が入りそうになるのを必死にこらえる。
デカイ枕を両手で抱え込んで顔を埋めて耐えてたら、翔ちゃんの両手が両肩から更に肘の方まで滑って来て、耳元に顔が近付いたのが分かった。
「・・・雅紀、いい匂いがするね・・・」
えっっ?!
おれ、軽くパニックなんですけど。
「う~、キモチイイ!」
わざと大きい声で言ってみせる。
ごっ、誤魔化せてる?!おれ。
あぁっ、ヤバイ、耳元で翔ちゃんの息遣いが分かる・・・!
もうさ、ダメだよね。 一回意識しちゃうと。
さっきまで平気だった背中を滑る手までも、意識が集中しちゃって・・・
背中全体、感度上がっちゃってるよ、おれ。
ヤバくね?
「・・・細っこくて・・・女みてぇな腰だな・・・」
そう言って手を這わすからさ・・・
「ちょ・・・!もぉっ、しょぉちゃん、欲求不満なんじゃないのっ?オトコの腰、撫でまわしてどうすんのさ!」
って、言っちゃったのが間違いだった・・・
to be continued...