二人は興味津々の顔でチャンミンのそばに、にじり寄った。
「キュヒョナはこんな事言っても信じないよ」
「どういう意味だよ、それ」
「超現実的って事」
「おまえだって、そうじゃないか」
「うん…まあ…そうだったんだけど…この件に関しては…」
「四の五の言わずに説明しろよ!茶々姫って誰の事だよ」
キュヒョンはあれやこれやと言い訳をするチャンミンを
制止して肩をつついた。
「そうですよ!チャンミニョン言ってくれなきゃ信じるかどうかも
わかりませんよ」
「まぁ…じゃぁ…別に信じなくてもいいんだけどさ…
日本の昔の戦ばっかりやってる頃のどこかのお城のお姫様で…」
チラッと二人の反応を窺うと笑うわけでもなく、真剣な表情で聞き入っていたので
チャンミンは少しホッとして話を続けた。
「俺は姫様でユノヒョンは年下で忍びなんだ」
「え~何?そこにもユノヒョン出てくんの??
やってらんねー」キュヒョンは少し大きなリアクションでちゃかしたが、ミノが
それをとめ、
「チャンミニョン、それから?」と聞いた。
チャンミンは軽くキュヒョンを睨み、ミノの方へ向きを変えた。
「俺のかあさんは早くに死んでて、乳母が代わりに育ててくれたんだけど、その乳母の
子供がユノヒョンなんだ。
で、ずっと姉弟みたいに育ったけど、身分違いで段々逢えなくなって…
姫様はヒョン…その時は年下だから、ヒョンじゃなくて…」
言葉につまるチャンミンに
「そんな事はどうでもいいから!」キュヒョンが焦れて続きを催促する。
”何だよ、聞きたいんじゃん!”チャンミンは心の中で呟き、
フフっと笑って、ミノからキュヒョンへ視線を移した。
「姫様は顔も見た事ない男と結婚させられるんだけど、
ずっとずっと忍びのユノヒョンの事が好きで、忘れられなくて…
誰かから聞いた”人は死んでも又生まれ変わる”って話を信じて
ユノヒョンといつもそばにいる事が出来る仲間に生まれ変わりたい!って願ってるんだ」
そこまで言うと、チャンミンは何かまた心にグッと熱い感情が込み上げ
「フーーー」っと深く息を吐き、少し鼻をすすった。
「…なぁ、チャンミナ…それ占い師から聞いた話?」
「そう思うよな…それがそうじゃなくて、何回も何回も同じ夢見るんだ。
最初はただの夢だって気にしてなかったけど、あんまり何回も見るし
同じ人物設定なのに、色んな場面があるんだよ。
それがやけにリアルで…
それにこの前ユノヒョンが茶々姫って俺の事呼んだんだ。
自分の事も忍びだったって言ってたし」
「え~~~??ほんとですか?それ?」
「ほんとなんだよ、ミノ…ユノヒョンが病気で倒れた時も
その夢見て、”茶々どこ行くんだ!”って叫んだりして…
その時はまだ茶々って覚えてなくて、どっかで聞いた話だなぁ~
なんて思ってたんだけど、最近しょっちゅう姫様なんだよ…俺」
「で……もしかして、忍びのユノヒョンも姫様の事を愛していると?」
ミノは冷やかし気味の表情でチャンミンを見た。
「そ… そうだよ!!悪いかよ!なんだよ!ミノまでそんな顔して」
チャンミンは真っ赤になって、ワインを一気に飲み干した。
冷やかすんなら、もうやめる!と言うような顔をして、ワインを煽る
チャンミンに二人は
「何だよ!そこまで言って途中でやめるなよ!
愛し合ってるならいいじゃん!ハッピーエンドじゃん!」
それを聞いたチャンミンはフッと悲しい顔をして、
「聞きたい?おまえらこんな話聞いておもしろいか?」
「いいから!チャンミナ!もったいぶんなよ!
姫様どうしたんだよ!!」
しょうがないなぁ~話してやるかと言うような上から目線で二人を見て
「……結婚させられた奴も結構いい奴で、姫様の事すんげー愛してて、
大事にしてくれるんだけど、どうしてもダメで…
抱かれててもユノヒョンの事思い出したりして…
あ… いや… そんな事は言わなくていいか…」
チャンミンは照れて、鼻をポリポリとかいた。
キュヒョンは
”… て言う事は…やっぱりチャンミナが女なんだよな…
…まぁ、ユノヒョンが女…なんて事は考えにくいもんな…
自然っちゃ~自然だよな…
なのにグラマーな子は好きなんだよな…
う~ん、そこんとこがよくわからん…”不思議だなぁ~という表情で
恥ずかしがっているチャンミンを何も言わず見つめ、続きを話はじめるのを待った。
「…姫様は体が弱くて、いつも病気してて…
あ!キュヒョナ!おまえも出てきたよ!ハハハ!!思い出した。
おまえ昔っから友達だったよ!ハハハハ
あ~腹いて~~
腐れ縁だな」
「…ヒョン…僕は?」置いてきぼりのミノが寂しげに聞いた。
「…あ…ごめん…ミノは出てこなかった…
テミンがユノヒョンの許嫁だったけど…
そこもなんかリアルだろ?」
「ギャハハハ…そうなんですか?あいつもやっぱり
そうなる運命だったんですかね~?気の毒に…
許嫁なのに…実らないんですね?」
「それは俺わからないんだ…」
「???何でです?」
「まぁそんな、焦るなよ…」ニヤリと笑って二人を見るチャンミン。
そこへ ブーブーブー チャンミンの携帯が鳴り、
まあるいほっぺたがキュンと上に上がり、表情が一変した。
「悪い…ちょっとごめん」携帯を手に持ち、立ち上がり、部屋を出て電話に出た。
「もしもし… ヒョン?どうしたの? …ん? あした?」
部屋に残された二人は電話に出たチャンミンの声が1オクターブあがり、
甘ったるくなったのが聞こえ、げんなりしてTVの音量をあげた。
”やってらんねーー …友達があんな声出すの聞くのは正直きもいけど…
…いいなぁ~チャンミナ…幸せそうで… 俺も早く彼女欲しいなぁ~”
「なぁーミノ、彼女出来たら女の子紹介してくれよな」
「何ですか…それ…ヒョンこそ紹介して下さいよ」
「いっそのこと、女たらしのヒチョルヒョンに紹介してもらおうか?」
「う~ん、なんか恩着せがましく言われそうだから、遠慮します」
「確かにな…」
「そういえば、テミナ彼女出来たんだろ??その子に紹介してもらえよ!」
「僕のプライドが許しません!」ミノがキリリと男らしい表情で答え、
プッと二人で噴き出した。
「…わりーどうした??何笑ってんの?」とチャンミンがニヤケタ顔が
戻らないままで部屋に帰って来た。
「おーおーニヤケタ顔しちゃって!!ユノヒョンだろ?何だって?
おまえらさっきまでずっと仕事で一緒だったんだろ?
まだ何時間もたってないぜ?」
「ん?明日迎えに行こうか?って」ニヤケタ顔を下を向いて戻そうとしながら
チャンミンはポテチを頬張った。
「迎えにって…ヒョンの家反対方向だし!どっちも事務所のそばじゃん!!!」
呆れた!とでもいうようにキュヒョンはチャンミンを見ずに
ワインを自分のグラスに注ぎ、一気に飲み干した。
”おやすみ…チャンミナ…愛してるよ…チュッ”っていうヒョンの最後の言葉は
言えないよな…グフフ…
下を向いて、口をもぐもぐさせ、またチャンミンのほっぺたが上がった。
「はぁ~ミノ…もうこんな奴ほっといて、ゲームしないか!?」
キュヒョンがふてくされたように言うが、ミノは
「えー嫌ですよー姫様の話の続き聞きたいですよー
チャンミニョン、教えてくださいよー」
「フッフッフ…ミノ…聞きたい??」勝ち誇ったようにキュヒョンを見て高笑いをした。