以前にJJの
スタートレック・インツウダークネスの評を書いたときに
スタートレックとスターウォーズの新作を撮るなんて
大したものだよ・・と書いた。
もちろん、尊敬の意味を込めてだ
恐らくは、
スタートレックの成功によって
今回の起用となったと思うが
その作品をいま、見返してみると
実に、面白いことに気がつく
JJ版スタートレックの1作目は
前日談だ
若き日の、カークとスポックの話だ
要するにこれは、スターウォーズにおける
フャントム・・いや
ファントムメナスだ
ところが、ここになんと
JJはレナードニモイを出してきた
それも
スポック役で
どうやったのか?
タイムスリップさせて・・
笑ってしまう。
めちゃくちゃである
さらには
若き日のスポックと会話させてしまうのだ
なんでこんなめちゃくちゃをしたのか
それによって
熱狂的なスタートレックマニア、
トレッキーが喜ぶからだ
それでいながら
映画のストーリーは面白く
新しくカークやスポックを映じる若き役者も
十分に魅力的になっている
もしもだ
もし
JJが、スターウォーズの前日談、
ファントムメナスを撮ったとして
もし
若き日の、アナキン・スカイウォーカーの前に
ダースベイダーが現れるというストーリーが
スクリーンに現出したとしたら・・あんなに酷評されただろうか
JJの作り出す世界の大きな特徴は
物語のお約束事の
タガをいきなり、無理やり
外してしまう・・ということだ
サスペンス映画で
いきなり主人公が死んでしまう
現代社会にいきなり
恐竜が現れる
過去のアルカトラズの囚人が
全員、
現代に蘇る
とにかく
冒頭にいきなり物語のお約束をぶち壊す
驚いている客に
その理由を説明していると
またいきなりタガを外す。
そうなると
観客の中にある
物語を先読みしようという
こざかしい思考回路を切断してしまう
それは
当然のことながら
危険は伴う
長年の映画の歴史の中で作られた約束事を
ぶち壊すのだ
観客から一気に拒絶されるかもしれない
事実「アルカトラズ」というTVシリーズは
1シーズンで強制終了させられた
タガをはずしながら
物語は
破綻してはならない
スターウォーズとは
それ自体がひとつのジャンルだ
しかし
JJはそのタガをいきなりはずした
それが
オープニングの設定説明の1行目
「ルークが消えた」だ
そして
それを物語の核にすえた
本来
このスターウォーズの主役ともいうべき
ルークを消した
ただ登場人物の中では
その存在は大きく
物語の謎となっている
まるで
「ゴドーを待ちながら」だ
登場しない男を待つだけの話
そして
その男の登場をクライマックスに
持ってくる
実は
JJのこの手法は物語の約束事を
熟知してないと
できない
そこを
勘違いしているひとが
ただ物語を破壊すればいいと思っている
こう考えていくと
JJの起用は、
適任だったのかもしれない
彼ほど
現代において
ジャンル映画を新しく出来る監督も
いないのかもしれない
これで
スターウォーズは新しいサーガに突入できる
もう
古い世界観に囚われる必要はなくなった
この映画を悪く言ったり
まあ、いいんじゃない・・レベルで語っているひとは
わからないのかもしれないが
この映画が成し遂げたことは
物語世界の革命でもあるのだ
何十年もの歳月をかけて
作り上げ
硬直してしまった物語というものの
本質を変えないで
新しく見せる技を
見せたのだ