ちょうど10年前の今日


私はオーバードーズをした。


いわゆる、


睡眠薬の大量摂取による自殺未遂をした



2011年は、震災があった年


日本中が命の大切さを感じ


人との絆や繋がりを大切にした1年だったが



当時、23歳の私は、とにかく孤独だった。



才能もなく、


うつ病の症状も重く1日30錠の投薬をしていた


就職も出来ず、バイトもまともに行けず


ストレスのせいなのか


生理が半年間も止まっており


彼氏はもちろん、好きな人とも連絡が取れず


メールする友達も居ない


お金も無い


いつも死にたかった



私の人生は、


ずっと「死にたい」が付き纏っていた


一番最初に「死にたい」って思ったのは


6歳の時、小学校の登校中に


怖い担任の先生に会いたくなくて


「しにたいな、いきたくないな」って思った。



そんな事を表面に出さない隙のない自分のことが


私は、大嫌いだった



10年前の、あの日



同級生の何人かの展示会が


新聞に取り上げられた。



私は、「病気だから」


誘われもしなかった展示会



嫉妬で身体が燃え上がりそうな嫌悪感を感じ


「おめでとう」なんて嘘でも言えなかった。



寝る前に、家族と


何かのキッカケで言い合いになった。



ああ、私には誰も味方が居ない


努力しても欲しいものは何も手に入れられない。


この人生に何も未練はない



寝る前に、泣きながら


抗うつ剤や睡眠薬などを


6シート分をまとめてお酒と一緒に飲んだ



心臓がドキドキした



ああ、やっと死ぬんだ。


つらいことが終わるんだ。


これで終われて、嬉しいな。



そう思って、寝床についた




夢を見た



顔の真ん中から泉が噴き出す夢



水が、ボコボコと溢れている


。。。



なんだか、顔が濡れているのが


妙にリアルだと思って、目が覚める



鼻の下が濡れている


いや、口の周りも濡れている



鼻水や涎だろうか?


顔元を覆いながら、のっそりと起き上がり


鏡台のティッシュを取ろうとしたら



足元に、



パシャ、パシャっと



『ぬるい水』が溢れた



それは、紛れもなく『水』だと思った。




急いで、部屋の電気を付けると



足元が、血の池だった。



顔の真ん中から溢れていたのは



『泉』ではなく


私の鼻血だった



鏡台に血だらけの自分の顔に驚いた



急いでティッシュを引き上げて


顔をぬぐいながら


鼻を抑える



しかし鼻血は、止まらない



全然、止まらない


それなのに、身体が怠いだけで


体のどこも痛くない




起き上がったせいか


水道の蛇口をひねったかのごとく


サラサラと血が流れていく


あっという間に、足元に血の海が出来た



オーバードーズをすれば


静かに簡単に死ぬんだと思っていた


残念ながら、全然、違った。


痛みもなく血だけが謎に


鼻から出続けている。




自分で死ぬことを選んだはずなのに


死ぬことにパニックになっていた。



物音に気づいた両親が何か言っている


「なぜか分からないけど、


鼻血が止まらないの」



嘘を吐いた。


分からない訳がない。



6シートも飲んだのだから、


何かしらのショック症状が出たのだ



あんなに自殺願望があったのに


死に直面すると


人は、すがってしまった




両親にアルコールティッシュで


顔にこびりついた血を


ゴシゴシと拭われる



い、痛い


アルコールで顔を拭かれると


顔がヒリヒリして


すごく、すごく痛い、やめて



鼻血は30分経っても止まらなかった



病院に行くか?それとも救急車か?


みたいな話になってた頃だと思う



口元から何か出た


ピンポン玉サイズの赤黒い血の塊だった



それを見たら、



なんだか初めて



自分のことを惨めで



可哀想、だと思った



私、別に死にたい訳じゃなかったのにな


私、幸せに生きていたいだけだったのにな


何も血を吐いたり自殺がしたいんじゃなくて



友達と遊んだり


男の人とデートしてみたり


絵を描いて



普通に、



普通に生きて居たかっただけなのにな




「……鼻血、止まったみたい


明日、耳鼻科に行ってみるよ


それか婦人科に行く予定。


生理が止まってるから


きっと鼻から生理がきたんだよ」



そんな嘘を吐いた。




これが私の人生のターニングポイント



色んな人がよく


「ヘレンさんは前向きですよね」って


言ってくれるけど



あの日、薄暗い部屋で


血まみれになりながら見た、


あのピンポン玉の血の塊が


わたしは忘れられない



私は、『あの日』に、帰りたくない。




自分を責めても、虐めても


本当に無駄だし


人は簡単に死ぬことが出来ないから


精一杯、出来ることをするの



それが私の総て。



この10年、本当に色々頑張ってきた



もうそろそろ終わりにしたい、


そんな事もたまに思うけど


でも、どうせまた生きてしまうから



どうせ死んでしまう、その日まで


何かしらやって生きていくよ