最後にした食事の記憶はなく
数週間以上きっとなにも食べていない
いつ寝たのかも覚えていない
でも眠たくなくて、

毎日、毎日、ただ座って無でいるだけの時間を過ごす。

なにもない。欲も。感情も。
その時の記憶はなくて、ただずっと耳鳴りがしていた。体が小刻みにずっと震えている。光がパチパチしてきた。きっと幻覚だろう。
でもそんな事に構う余裕なんてなかった。

悲しくて泣く。でも涙は出なくて、声だけ漏れる。痛みはなく、ただポッカリと何かが落ちてしまった。空っぽになってしまった。


毎日、白いおにぎりを持ってきてくれる人がいた。

誰も手をつけないそのおにぎりはいつのまにかテーブルの上から片付いていた。

食事なんてとれない。とりたくない。私たちばかり食事なんて。泣きじゃくる母。

ただそれを隣で見ている私。
もちろん、感情はない。心も痛くない。ううん、痛いと感じる心がないみたい。
ただ、なにも感じなかった。

シャワーから聞こえる母の泣き叫ぶ声。
いない君にずっと話しかけながら掃除機をかけ続ける父。



ふとっ外に出る。
ミンミンとなくセミ、暑そうな音は聞こえるけど、私の体は冷たく感じる。

ただ、庭の植物は眩しいくらいの生を放っていりる。その植物達に触れる。

眩しい。眩しい。この植物の生が眩しい、そして愛おしい。急いでホース置き場に走り、蛇口をひねり、ゆっくりホースを植物達に向ける。

あぁ、生きてる。すごいな。
生きているんだ。愛おしいな。

数週間ぶりに心が体が何かを感じた。

その植物達に少し触れ、その力の凄さに、生命の鮮やかさに圧倒されながら、私の心もなにかを感じとれている事に気がつく。

生きていることってそれだけで奇跡なのね。

それだけで、幸せな事なのね。

ぎゅっと両手で自分を抱きしめる。
じゅわじゅわ何かが溢れてくる。
あったかくて、そのあたたかいものが体中を満たしていく。

あの日、逝ってしまった君。
私たちの心もそこで止まった。


でも、私たちは新しい何かを受け取ったみたいだね。君からの眩しいあたたかいそれが私たちの新しい心になって生きていくことを誇りに思う。

そして、ほんの少し、お腹、すいたな。