以前住んでいたマンションの郵便受けに、1枚の紙が入っていた。
そこには、このマンションは競売にかけられ、オーナーが変わった事と、今月から家賃の振込先が変更になる事と、新しい振込先が書かれていた。
そろそろ月末で、明日あたり振込みに行かなければ、と思っていたところだった。
オレは旧オーナーの身になって考え「世知辛い世の中だなあ」と思ったものだった。
夕食をとり、風呂に入って、テレビを見て、寝床に入った。
うとうとしながら、明日やる事を考えていた。
「明日は銀行に行かないとな…新しい振込先の書かれた紙はカバンに入れたな…しかし大事な事なのに紙切れ1枚とはな…アレぐらいオレでも作れるぞ…パソコンとプリンターあるし…それで作ってそのへんのマンションにバラまいたら…架空口座が必要か…売買されてるらしいし、なんとかなるか…翌日からその口座にジャンジャン金が振り込まれると…やったろか……あぁっ詐欺や!」
翌朝マンションの管理会社へ電話すると、すでに何件か問い合わせがあったそうで、警察にも連絡したとのこと。振り込まなくてよかった。