リベロ(伊: Libero、自由)とはスイーパーの別称。
特定のマークを持たず、基本的に「自由」な守備をし、チャンスのときには積極的に攻撃参加するディフェンダーがこのように呼ばれる。
まず、ベッケンバウアーが確立した「リベロ」のポジションを語る前に当時のサッカー戦術の常識を知らないと、彼が行った革新的な戦術を理解できません。
サッカー戦術は各自がボールを追いかけまわす創成期から、守備と攻撃の役割分担が行われ、次第にポジションの役割が確立されていくことになります。
ポジションの役割分担はある意味で今より厳密に定められ、FWは攻撃する人であり、DFはひたすら守備する人と考えられていました。
左右や中央の位置取りや前後に運動する範囲も決められ、これをチームプレーとして厳守することが常識であると考えられていました。
そのため味方が攻撃を受けてもFWは守備に必ずしも参加することなく前線に残る戦術も常識的でしたし、攻撃中にDFが参加するのも例外的とも考えられていました。
そこでリベロの話に戻ります。
そもそもリベロとは自由人を意味するイタリア語で、当然このポジションはイタリアでまず発明されました。
ただしイタリアで出来た頃のリベロは、現在ベッケンバウアーが確立したリベロとはやや趣旨が違います。
イタリア代表の伝統戦術は「カテナチオ(鍵)」と呼ばれるもので、5-3-2システムです。
5人のDFの配置がフラットに5人ではなく、4人のフラットなDFの後ろにさらにもう一人DFが最後尾に位置するものです。
現在ではリベロというよりスイーパーと呼んだ方がピッタリ来るシステムです。
リベロと名づけられたのはフラットなDFの後ろを左右のポジションの拘束から離れて自由に動き回れるからだと考えています。
それと違い、ベッケンバウアーのリベロは本家イタリアの「左右だけ」ではなく「前後も自由」にした所に革新的な意味があります。
つまりDFの攻撃参加を積極的に行ったのが驚異的だったのです。
当時のDFとは「相手の攻撃を確実に防ぐ」のみに存在しており、とくにフルバックの選手の攻撃参加などは非常識と考えられ、結局攻撃とはFWがするもので、守備的な選手はMFぐらいまでが攻撃に参加する選手であるのがサッカーの戦術である固く信じられていたのでした。
今でこそDFの選手のオーバーラップは当たり前ですが、当時のポジションの考え方からすると驚天動地のものであったのでしょう。
ベッケンバウアーがさらに驚異的であったのは、現在の単なるオーバーラップ的な攻撃だけではなく、最後尾のスイーパーとしてボール奪取に成功すれば、キーパーを除く9人の選手を操る司令塔としてスイッチ出来たことも革命的だったと思われます。
ただし、ベッケンバウアーが確立したリベロに求められる運動量と技術は膨大なものです。
もともと本来の業務であるDFの仕事は当然の事として確実に果たし、中盤の要としてのMFの業務を華麗なテクニックとともに遂行し、FWとして鋭い得点感覚を爆発させなければなりません。
つまり、FWとしてシュートを放ってもカウンターを受ければすぐさま最後尾のスイーパーまで素早く戻りDFとしての仕事をこなし、また攻撃に転じれば敵ゴールまで怒涛のように攻め込む事が要求されます。
まさに自由人=リベロとしてフィールドを縦横無尽に駆け回るポジションですが、これほどの運動量、テクニックを併せ持つ事はベッケンバウアーをもってのみ可能なことであり、彼はリベロの確立者、完成者であるとされていますが、今もをって彼をしのぐリベロは存在しないとされているのはその様な選手が現れることが如何に難しいことかを物語っています。
