空の主様も御命如何によっては

この部族の存続が危ぶまれる

毎年、貢物を運びて

御命永らえるようにと

取引のされている事ではあるが

先日、使いの者が便りを運んで来て

今年の貢物の中に我が娘を

指しだせとの使いであった

この度の申し出を受けると言う事は

戦わずして

民族を差し出すこと

娘を取られれば、手を出す事成らず

男の子が生まれたなら

否応も無く空の主様の命は取られ

娘とて、定かでは無く

後継ぎがあれば、我が民の者

指一本触れることは成らぬであろう

そうして、段々に我が民の中に

霧の民の足音が忍び寄り

曳いては、我が空の民は

民族そのものの息の根が止まる


沙羅より