菊花は、何処に連れて行かれるかと思案する羽目に成った。
伺う場所によっては、着るものを選ぶのではないか?
考えなければ、是は人を試すと言う事だろうか?まさか、被害者意識が頭をもたげてくるとは、思わなかった、単純に好きな洋服?そうだ、先ず着物では無い、お見合いの前だから、スラックスもダメ、初めてお目に掛るのですものね。
結構推理ゲームって面白いと思いなおし、あれこれ推理を楽しんだ。
かちっとした、スーツはどうだろう?政治的な集まりには向いていそう、でもね
幾ら肩ぐるしい仕事でも、ご結婚を考えている女性の服装には、似合わないでしょう?
ならば、やはり時期も考えて動きやすいワンピースに歩きやすいヒール、山登りには、誘われないでしょう?
バッグは、小ぶりなハンカチ口紅、これ以外に何かいるか?ああメモ位は持ちたいわね、でも、お見合いの前にメモを取らなければならないほど、あれやこれ欲求の多い方だと、一寸がっかりするかもしれない、出来たら伝言は白井様からだけにして欲しい。
ベッドで横に成ってからも菊花は色々と考えを巡らせていた。
正式な婚約発表とは一体どうするのか、まさか今日明日で、身内の者を全員招集して、宴を模様す等とは仰らないでしょうが、とか。
そう、想いながらも何処か気持ちが乗らない、理由ははっきりしている。今日を限り、いえ明日を限りなのだ。
今はあの方だと良いなと思いながら、想いを巡らす事も出来るが、ご結婚する方のお顔を拝見してら、そうはいかない。
相手の方を知ると同時にこの想いは消し去らねばならない。
涙は流さない、其処までまだ想いが育っていない事を祈ろう、「T・K」の刺繍のハンカチを思い浮かべながら眠りに着いた。