国道から市道に乗りいれたら後はブレーキを踏めば直ぐ門扉の前に着く。

国道からでも見える位置に門扉があるのだ。

「奥様、門を開けてもらって下さい」と言われたのは市道に入る手前の信号機、青で通過すると直ぐ左にハンドルを切る、一緒に走っていた車は、だが直進して走り去ってしまった。


しかし、菊花達の車は自宅の敷地に入り、奥の裏庭迄そのまま車を進めた。

そして

「御荷物は運びますから、皆様中にお入りください」と武田さんに指示され3人共バッグと日傘を手に裏口から家に入り込んだ。


門扉は菊花の指示通りさきが、車が入ると同時に閉めてしまった。

怪しげな車は国道を直進して行ってしまったので、危険だったかどうかも分からないが、武田さんはてきぱきと荷物を降ろし、出た後で門を閉めるように言い置いて、出て行ってしまった。


「お母様、先程の車はなあに?」

「分からないけれど、もしかしたら車がぶつかってくるのかと思ったわね、でもきっと居眠りでもしていたのでしょう、何事も無くて良かったわ」

都さんの問いにお母様が返事をしていらっしゃるが、菊花は母も居眠りとは思っていないのだろうと思った。


「取りあえず、お父様にはご報告しておくわ、他の方からお聞きになると心配されるでしょうから、折角映画でもと思ったのに残念ね、また、次のお出かけの時にでも行ってみましょう、じゃ、お父様にお電話を掛けて来るから、荷物を置いてらっしゃい」さきが、荷物を抱えて階段に向かっている。

 この階段も気を付けないと、とても急だ。

右手の階段を上がった所に中二階の応接間と居間がある。


荷物を置いて居間に急ぐ。