夕方早い時間に江姉さまが帰って来られた。

何時もの仕事用のスーツを御召しになっていらっしゃるのだが、玄関からお入りになってこられた様子から、雰囲気が変わったように感じられ、異和感がある。

「都さんは間に合いそうもないので、後で勇治郎さんが御迎えに行って下さるわ」一緒に帰って来られると思っていたのだが、遅れるらしい。

母も出て来て、

「御台所はさき達にまかせて、お茶にしましょう」とお茶を淹れに行かれた


「江姉さまとってもお綺麗!」改めて御顔を見ると何か雰囲気が和らいだようで、輝いて見える。

もともと、お仕事が手早く何でもてきぱきとこなすので、動きに切れがあり、踊りの先生も「江さんは、男踊りでも良いね」と言っていらっしゃるが、きりっとしたイメージから、少し丸みが出て女らしくなったような気がする。


「あら?10日程合わない内に?其れより本当に菊花さんは大丈夫?」

「ええ。今日のお医者様の見立てでも問題は無かったの、あざが綺麗になるまでは2週間位かかるでしょうけれど、骨にひびなど入って居なかったので、其れより、余り言わないで、さきがとっても気にしているの、可哀想な位、昨夜父にも呼ばれていたから、酷くは叱られていないと思うけれど、其れより、江姉さま、お仕事で何か有ったの?」

菊花はこの事故の後の白井様の関与の仕方が気になるので、会社で何か問題があるのではないかと疑っていたのだ。


母がお茶のワゴンを押して入って来た。