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次の日、迎えを待つ支度に、早くから長老の家に、村人たちが集まり、花嫁を送り出す支度に余念がない。

祝いの食事の支度は、長老のおかみさんと、娘達が数人の手伝いを連れて出掛け、獲物を持ち帰り、既に料理をしている。

肉の美味しそうな匂いがしている。


年配の男連中は、道中の途中迄,花嫁行列を作り、荷を担ぎ、馬を引いて送り届ける為、正式な羽織はかま姿で、花婿を待ち構えている。

若い男連中は、花嫁行列の後に着いて行き、万が一、今回の作戦が失敗に終わった時は、何時でも、戦いに挑めるよう、祝い衣裳の下には、戦装束で、迎えの到着を待っている。


肝心の花嫁は、長老の言い付けで、女子しに連れていかれ、誰の目にも触れさせないよう、誰とも話をする間も無いよう、離れで、花嫁の支度に余念がない。

今日はりきやんの姉さんも、朝の早くから手伝いに来ているが、花嫁の支度部屋に手伝いに入った後、誰もその姿は目にしていない。

長老の娘の柳は当然花嫁の支度部屋から、一歩も出ることなく、いよいよ、花婿風の使い迎えが到着したとの知らせが入った。


山向こうの森のおんじに仲人を頼みこんで引き受けてもらった。

羽織はかまのおんじ夫婦が揃って馬から降りて来て、風の使いで嫁を貰いに来たが、準備は出来ているかと尋ねると、

長老はもうすぐ準備が出来るので、それまで、軽くお食事をして、暫くお待ち願うと、是もお決まりの口上を述べる。


広間に、正装の村人一同内揃い、客人の揃うのを待っている。

酒や肴の振る舞いに朝早くから出立した、森のおんじの家来たちは

「是は、有り難い」と粋の良い食べっぷり。

いよいよ、花嫁の支度が出来ましたとの挨拶で、家来の人達、準備に出て行き、花嫁は父母に向かいあい、

「お世話に成りました」とのみご挨拶、真っ白い綿帽子姿の花嫁を預かり、

森のおんじは馬にまたがり、


「それでは、花嫁行列出発!!」と大きく声を掛け、白馬に花嫁を乗せ、行列は出発した。

柔らかいお日様が花嫁の行列を祝うように付いてゆく。

と、空からきらきらと風に舞いながら小さな雨粒が花嫁さんに降りかかる。


畑を耕している爺様と婆様が空を仰ぎ見て

「あれあれ、お狐様の嫁入りぞな、何処の誰ぞが、また、化かされてござらんか?」

「あれ!本に狐の嫁入りだね」


風は村はずれで、花嫁の来るのを、今か今かと待ち構えている。

其処に森のおんじに連れられた花嫁行列が到着、馬はそのまま歩みを続け、村長の屋敷に着いた。

既に村人が大勢集まり、花嫁の到着を首を長くして待っていた。


馬から降りた花嫁はそのまま、大広間に案内され、待ち構える人々の前で三々九度の固めの杯を頂き、綿帽子を脱いで上座に座った。

風は横を向いて花嫁の顔を見る間もなく、祝いの酒を勧められ、気が着けば花嫁は既に座をはずし、森のおんじ達も

「よう向きは終わった、暗くなる前に帰り着きたいと」

沢山の引き出物と共に、引き揚げて行った。


祝い酒に酔った風は新床に入って見ると、花嫁は化粧落としか、まだ戻って居ない。

花嫁の顔を見た事が無いのだが、まだかな?と布団にもぐりこんで、目を閉じた。


翌朝目覚めた風の枕元でりきやんの姉さんが、優しく微笑んで

「おはよ風!」

「コーン!!」と風の驚きの声。


言うお話です。  沙羅より