冬の到来を告げる冷たい風が吹く頃

ようやく自営業に区切りを付けて

サラリーマン生活に戻って居た

商売は儲けてこそ商売

毎月赤字を出すならさっさと止めなければならない


サラリーマンの良い所は

時間を売ると言う事

自分の時間が欲しければ売らなければ良いだけ

規定時間は雇用契約のうちなので

契約は守らなければならないが

残業や早出や休日出勤を

断れば自分の時間は多少確保出来る


その事で子供達も少し

落ち着きが出て

仕事や学校が終われば

帰ると言う単純な行動に成ってくる


寒い日曜日のある朝

ベランダで洗濯物を広げ

何と色気の無い洗濯ものばかりと

感心して眺めていると

御隣の玄関のドアが開いた

そして新聞配達用の重量級の自転車を

玄関から引き出し

荷台に取り付けてある荷物置きを外している


そして家の中から運びだしたのは

小柄なお隣さんが運ぶのにシックハックしている

ピンクの大きなプラスチックの衣裳ケース

重量が有るのかな?

頑丈にガムテープで目張りがしてある

其れを自転車の荷台にくくりつけ

ゆらゆらゆすぶって安定感を確認している


揺らす度にカタカタと固いものが

プラスチックに当たって居る音がしている

そう言えばこの方

自転車で7km位離れた遠い地域で

見かけた事がある

多分自転車で

何処までも行かれる方なのだろう


戻ってこられた時には

衣裳ケースは積んでいらっしゃらなかった

そして此方の御宅も

何時の間にやら

玄関の外に衣装ケースを積み上げて置いてある

中は透明のケースなので

まだ袋に入った新品の赤ちゃんや女の子用の

洋服が入って居るのが丸分かり


ご結婚されていないと言っていたのに

何故?

あの単車で「また来る」と帰って行った方の御姿

あの後一度も見かけない


聞き及んで2件の事故?

絡んでいないか?  


       完


心配性の  沙羅より