何と言っても梅雨の間は悩まされた

有り難い事に休日が無く

働いているので

昼間はまだ仕事場に行き

其処には食事もTVもクーラーも

良く効いているので

子供達も夜のお風呂に入って眠る迄の時間を

仕事場で過ごすようになっていた


親に気を使って言葉では言わなかったが

実際はあの匂いに閉口していたのだと思う

ひたすら我慢の夏を過ごしたある日

向かいのゴミ屋敷の男性

若い女の子を連れて帰って来た

初めて訪れたらしく

どうして上がったら良いのか

玄関口でまごまごしていると

何とも優しく家の中に案内している


こう言う家でも連れて来られたら

入って行くのだと感心していたら

年配の男性と争う声が聞こえる

と言っても僅かな時間で

又男性と連れの彼女とは出掛けて行った

そう言えば赤ちゃんの声聞こえなくなっている

御母さんは二階のベランダに炊飯器を置いて

食事の支度をしていたのに

御母さんも見えない

違う女性と付き合いだしたのだろう


その日の夕方

男性が一人で帰って来た

ゴミ屋敷の中に入って行って

暫くすると

激しいどなり声が聞こえる

そして階段からものが落ちる音


慌てて外を覗いてみると

年配の男性が

「助けて、助けて!」とゴミの山から転げ落ち

屈強な男性がその男性の

お腹を蹴り倒し

座り込んでいるのに

外にけり出している所だった


年配の女性が間に入り

止めていたが年配の男性は

体を折り曲げ

「助けて、痛いよ」と言う泣き声

屈強な男性はそのまま出掛けて行き

妻に支えられた年配の男性と

二人は家の中に入って行った


それから一時間ほどしたころ

この狭い路地に救急車が入って来た

家の前に止まるので

見ると

ゴミ屋敷の中に救急隊員入って行き

担架をかついで出てきたかと思うと

年配の女性も付き添って

運ばれて行った


夜中車の止まる音に

外を見ると緑十字の寝台車

無言の帰宅をされたようだ

そして一時間もしない内に

今度は、パトカーが到着

この家を見たら何方も

詳しく死因調査等と御思いいは成らないのでしょうか?


僅か15分程で

帰って行かれました

家庭内事故と言う事で

終わったようです


それから一カ月の間で

みるみるゴミが片付けられ

綺麗に整理され

ある日年配の女性も消えました

何の挨拶も残さず

でもきっと心穏やかに

暮らしていらっしゃるのだと思います


そしてこの頃には

あの酷い悪臭も慣れたのか

薄れたのか我慢できるようになっていました


隣の男性は何故か

次男に声を掛けるように成ったようで

学校から帰る頃

丁度御隣も新聞配達を終え

家に戻って来た様子で

話をするらしい


家の中で噂話等しないのに

この子に、何か聞いても

情報は得られない筈

辺にくぎを刺して

子供の意識を過剰にするのも危険なので

話はしてはいない


続編へ  沙羅より