「菊花様お二方とも、もう朝の間でお見かけいたしました」

「そう?」とは言ったが気に成っている訳ではない。


白地に小さな花柄を浮かべた着物を抱え、さきが飛んでくる。

髪を梳かし、朝用の着物に着替え、朝の間に入ると、

窓を背にテーブルに着いた、二人の間の席に着く。

妹の都が今にも立ち上がらんばかりに振り向いた、姉の江に、

「おはようございます」


「おはようございます、お父様もお母様ももうお食事終えられたわ。

伝言があってよ、

「菊花!早くしなさい!」特にお父様からは

「忘れていないか?」確認するよう言われたわ」

(誰もいないのに、横並びでお食事って違和感がある)と

思いながら席に着く。


それはそうだろう、其れくらいの念押しはして来るはず。

「おはようございます、菊花姉さま、何をお召しになるかお決まり?

あの、薄い黄色のお着物素敵だと思うのだけれど、でも菊花姉さまは、薄紅色のほうがお似合いかしら?」


「都さん、人のお召し物の事お気にされてはいけません、それよりご自分のお着物は、どちらにされるの?」江に諭されて都が大人しく座り直す。


どうも、この朝の間にいる間は誰でも、お行儀には気をつけなければならないし、噂話はいけないし、自慢話や、まして好き嫌いを言うのはご法度。

如何な三姉妹でも少しは気をつけると言うもの。


テーブルの上にはビッフェ式に盛られた朝食が乗っている。

好き嫌いは言えない、今日の卵はスクランブルエッグで、お野菜はいんげんと

ニンジンとイカの味噌和え、目の前に既に注がれたお味噌汁とご飯、淡いさくら色の輪島塗のお箸が忍者姿の箸置きに並べてある。


窓を背にするので、反対側に座りたいのだが、この朝食の間では、自分の席が決まっているので、父の命令には逆らえない。

父がいなくても。


お食事は 和食 沙羅より



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