「沙羅の事は、諒助や俺が、多少お金がかかったとしても、ガードマンを雇ってでも守る事が出来る。普通のサラリーマンの家庭では、そうはいかない。
直美さんも気にはしていたが、妹さんまでとなったら、とことん追い詰めて、捕まえるしかない。
沙羅達には、少し目をつぶってもらわなければならないかもしれない」
その言葉の響きに、沙羅は本当に危険な状態なのだと、改めて考え直した。
それから2時間近く走って大阪の沙羅の家に着いた。
事故を起こした木村の車は、現場を少し離れたところで乗り捨ててあったが、田舎道と違って、大阪ではどこにでも車をとめておくことはできない。
直ぐ警察に通報されて、強制移動させられてしまう。
近辺の立ち寄り先を聞いて回ったらしいが、近くのマンションで実家から仕送りをしてもらい、男友達数人が広いマンションに出入りしていたらしい。
分かった事はここ数カ月学校にも出席しておらず、以前に比べて、付き合いも少なくなったのか、この頃はあまり人の出入りも無かったようだ。
けれど家賃の滞納などは無く、実家はやはり裕福な家庭なのだろう。
それにしても可笑しいのは、何故こんなに沙羅のまわりを狙うのかという事。
どうもお金目当てであれば、もっと直接的にそれも本当の付き合いの申し込みでもいいはずなのに、幾ら家に泊めてくれなかったと言っても何年も前の事、執拗すぎるのではないか?
その夜、家に集まって皆で、原因について、意見を出し合っていた。
北井刑事が沙羅の両親の事故について調べなおしをしてくれていて、事故を起こしたトラックの運転手には沙羅より2つ年上で高校三年生の由美子さんと言う女の子がいたが、木村がこの由美子さんと付き合っていたのではないかと言う事。
只、この由美子さんは事故の後、母方の里の近くに引っ越したが、引っ越しと同時に高校を中途で退学して、生活力の無い母親を抱えて、生活の為に援助交際で稼いでいたようで、それを木村に知られたのを苦にしてその年の10月に自殺している。
是は由美子さんの母親から聞いたことで、夜遅い時間に年配の客と歩いているところを、たまたま木村に見つかって、後でなじられたのをとても苦にして、次の日に自宅の浴槽で手首を切って息絶えているのを母親によって発見されている。