本当にうれしい!

どうしたら分かってもらえるだろう?沙羅はシートベルトを伸ばして、運転中の桐村さんの頬に唇を寄せた。自分の思いがけない行動にはっとして、顔を上げることが出来ない。


「畜生!!このまま引き返したいな」とハンドルを握り直す。

沙羅と眼が合うと

「あ!御免口が悪かった」そう言うと、膝で握りしめた沙羅の手を取り、自分の唇に持て行って押し当てぐっと手を握った。

片手でハンドルを持っている、沙羅の手は握ったままだ。


西紀のサービスエリアに着いて諒助叔父に電話を入れると、10分程遅れているようなので、もうサービスエリアには寄らず、そのまま大阪に向かうので、2人も出発してとの事だった。


トイレ休憩の後、飲み物だけを買って急いで車に戻った。

桐村さんはエンジンを掛け暫く沙羅の顔を覗き込んで出発しようとはしない。

そっと沙羅を抱き寄せ優しいキスをする。

そしてふっ切るように車をスタートさせた。


それから車を走らせている間ずーっと沙羅の手を握っていたが、今回大阪に向かっている目的を嫌でも沙羅に伝えなければならないと思ったのだろう、直美の妹が狙われて、森君の咄嗟の判断で大事には至らなかったが、今回は直接木村がかかわっていたので、刑事事件として追いかけることが出来るらしいと言う。


ただどうしても、今回は捕まえたい。

車で逃走を図って挙句事故を起こし、車が止まった隙に妹さんが車から飛び降りて、後ろを追いかけていた森君の車に助けられたが、

これだけ大きな事をしたのでは、逃げ切る事を考えているわけではなさそうなので、皆が心配しているのは、何か恨み事があるのではないかという事。


北井刑事がこの点をもう一度調べてくれることになっている。