それから諒助叔父に電話を掛け、それぞれの車で出かけて西紀のサービスエリアで落ち合うことになったらしい。


「行こう」と手を伸ばし沙羅の腕を取るとそのまま車庫に向かった。さっき乗って来た軽自動車では無く、桐村さんもジープに乗っている。


「行こう」だけでついて行くから不思議と沙羅の不満顔を見て、

「諒助も後から来るから」となだめる


詳しくは車で走りながら教えてくれるらしい。こんなに急いで危なくないかと言うくらい、車を急がせている。

「運転は大丈夫だから、任せて」良いらしい。

いつも穏やかな動きのところしか見たことが無い桐村さんの激しい一面を見たような気がした。


高速の入り口までは当然桐村さんの車のほうが早い、諒助叔父が追ってくるとしても30分は遅れてくるはずだ。

こんなに急いで本当にどうしたのだろう、桐村さんは高速に上がると沙羅に電話を私西紀のサービスエリアで待てたら待つと伝えるように言われた。


諒助叔父に話し終えると、そのまま電話を貸してという、携帯を渡すと、叔父に向って、

「今から、沙羅と話をする」と言って電話を切ってしまった。

いやだ、何があったのだろう?


「あえて沙羅って呼ばせてもらうけど、いい?」と聞かれた。

誰でも沙羅って呼ぶし、沙羅さんと言うのは平山さんや、諒助叔父の会社の方たちだけで、とくに気にしてはいなかったが、改めてそう言われると、なんだかとても親密な呼び方のような気がして、とてもうれしい。

沙羅は素直に「はい」と返事をした。


そのあとは何かとても言い淀んでいるような気がするが、何だろう?

咳払いを一つして座り直したと思ったら

「沙羅、俺と結婚してくれないか?」と申し込まれた。

こんな、高速道路を走っているのに」、あっちを向いて考える事も出来ないのにどう返事をしたらいいのだろう


「あの、諒助叔父は知っていますか?」少し落ち着いてから尋ねた。

穏当は諒助叔父が知っていても知らなくても沙羅はすぐにでも

「はい!」って返事をしたいのだけれど、叔父に言いつけられている通り、相手が筋道を立てていなければどうしていいかわからない。


「諒助にはOKの返事は貰ってある、只本当は沙羅が、短大を卒業してから、申し込みをしようと思っていたが、沙羅の身辺が穏やかじゃないので、もう手をこねいてはいられない」


それで桐村さんが何時も諒助叔父と一緒に沙羅を助けに来てくれていたのに、どうしてもっと早く気付かなかったのだろう?

本当に感謝しなければならない。


「はい!」沙羅の返事は何の疑いも無かった。

素直に笑顔を向けることが出来た。

桐村さんがうれしそうに笑いながら、沙羅の体を抱き寄せる。