桐村さんも気付いて「おおっ」とにっこり笑う。

「こんにちは」と声をかけて窓際の席に着くなり携帯が鳴った。諒助からだ。

「諒助兄さん、今電車に乗ったところ、昨日ありさと真吾君は車で先に出発したから、一人で行くことになったので、福知山でお墓参りに寄ってから行こうと思って用事はそれだけ。」

「2週間くらいは向こうにいる、帰る前にはまた電話をするから」受話器を抑えて大慌てで一方的に伝える。

 桐村さんが、沙羅が話している横からしきりに電話を代わってと手を振っている、沙羅は戸惑いながらも携帯を渡した

「俺だ、沙羅ちゃんは俺と一緒だからと」いって電話を切ってしまった。

叔父の親友なのだから叔父は心配しないだろうが、沙羅は慌てて電話を掛け直そうとしたが「いいよ」と手で押さえる「諒助は心配していないから」

桐村さんは、何度か叔父と一緒に沙羅のマンションにも来ているので食事を作ってあげたりしているが、いつも、仕事がらみのようで、話の合間に食事をする、二人で親しく話をしたような記憶はない、

「奇遇だね、沙羅ちゃん元気そうで、卒業旅行?」と話が弾み友達の旅館にアルバイトに行くことや、父母のお墓詣りに、寄っていくこと等を話していたら、何時の間にやら「特急北近畿」の社内放送が、福知山駅への到着を告げている。

 2週間も行っているなら、都合でその近くまで行くので寄れるかも知れない、念のためと言うので旅館の連絡先も教えた。