深い雪に覆われた山小屋

夜明け前より

起き出だし小屋の屋根の

雪を祓い

煙の通り道開きながら


猟師の耳に聞こえしは

谷を目掛けて山を下る

雪の叫びなぎ倒された

木々の叫び

その中に高き叫びの

木霊すは雪の力に

なすすべなくなぎ倒された


男鹿の叫び声

何故か雪崩は

猟師の目の前

音を立てて流れ行き


雪崩の力をまともに

角に受けたか

波打たせながら

弾き飛ばされし男鹿の行く末


嵐の通り過ぎた後

暫し時を見て佇むが

後を追い来る雪崩は無く

遠く聞こえた音も

小さく消えゆき

猟師小屋に戻り

急ぎかんじきとそりを抱え


山道下る

後を子らが続き駆けて来る

身の丈ほどの大きな鹿

雪の深さで猟もままならず

薄き食料にて

耐えていた猟師の家族に


雪崩の置き土産

他の獰猛な動物に

出くわす前に持ち帰らんと

息せき切って

力合わせ

そりに結わえて

ひもを掛け


それぞれの紐にて

引き上げる

吐く息白く手は凍え

それでも回りの気配に抜かりなく

陽が高く登る頃やっと

小屋へと辿り着く


小屋の中より

母親らしき飛び出て

子らの話に抱き寄せて

急ぎ猟師を助け

やっとの思いで小屋の中


それを見やりて

北風曰く

雪を少し払っておけば

草木の芽吹きの

助けになろうて

北風ついでに漁師小屋

屋根の雪を一払い


高き笑いのご挨拶

猟師慌てて飛び出して

北風見送り手を合わす

これで春まで無事に

命繋げると


山の頂き目指し

北風急ぎ駆けのぼる

雲の子風の戻りくる

暫しの時を過ごすなり


次へ  沙羅より