北風若者見やりて

後は任せたと一吹きの後

急ぎ空へと駆けのぼり

雲の子肩に担ぎあげ


されば少しと

山へと向きを変え

海の民残して

かけゆくなり


高き空より眺むれば

先の雪雲晴れてある

されど山を見てあれば

木々の間に間を

雪の覆い


夕餉の山小屋小さな煙

北風渡れば掻き消す程

この年の山雪深く

民の暮らし向き

穏やかならず


山の頂き辿り着き

山裾見渡し思うなり

雪の子に助けを願うとしょう

雲を山の頂きに預け置き

北風マントを大きく翻し


山の頂き急旋回

雪の子集めてころがすなり

雪玉膨れて重くなり

山裾めがけて駆けい出す


二つ三つの雪玉

駆けだしてあれば

北風先頭を駆け

雪玉の向きあちらへこちらへ

山人の家を避け


餌を探して彷徨う母しかを避け

あちらこちらと雪玉ころがす

雪玉北風に煽られ

木々をよけ

夜明けの山道駆け降りる


突然目の前

大きな鹿の角

危ない!!と風を呼ぶが

間に会わず

その角掴まえなぎ倒す

高き叫びをもろともに


谷をめがけて

雪崩落ちる

やがてか弱き叫びも

雪の中に掻き消え

辺りに静かな朝日が登る


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