うたたねの若者起したるは

突然ドアを開け放しる

北風の仕業

慌て飛び起き

ドア抑えるも


北風の入り込みし

小屋の中

寒くなりてと薪くべる


一度の風にて

起きやれど

若者表を見渡しもせず

北風再び

ドアに向かい

激しく揺さぶり

ギシギシ鳴らす


若者慌てて

飛び出して

北風にて小さき小屋

吹き飛ばされるかと

遠く離れて眺めやる


その間も北風

木々を揺らし

白波うねれと

吹き荒れる


恐れを成した若者が

面を上げ遠く見やれば

何やら白きもの

動きやる

若者すばやく駆けいだす


海よりの運ばれし方

今にも白波が

襲いかかりし様にてあれば

傷つきし男に

手をば添え年配の男と共に

林の中を 担ぎ急ぐ


女二人も後を追う

年配の女性かばいながら

若き女性が急きたてる


林の中進みてくれど

小屋の前

若者そっと見上げては

無事を確かめ

不思議がる


先にあれほど

激しく扉を叩いた北の風

林の外で唸りおる

されど粗末な小屋の回り

緩やかに風渡るなり


若者北風の意を得たり

この者たち救えの

思し召し

さすれば寒き空の下

春秋するは

無駄な事

男を抱えて小屋の中

身体横たえ

湯を沸かすなり


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