少し前に読んだ本。


毎回、世間をざわざわさせるという意味でテーマの選択がうまいなあと思う東野圭吾さん。


今回のは読む前からテーマががっつり分かる帯。


「死刑は無力だ」


思いっきり問題提起型。挑発型と言ってもいいか。


明らかに重いテーマであろうこの本を手にとるのはいかがなものかとは思って最初に見たときは買わなかったのですが、勢いで買ってみました。


で、読み終わりました。


死刑賛成・反対、両方の視点を入れて書いているものの、個人的にはうーん、ちょっととりあげるケースが公平でないかもとも思わないでもない。途中でちょっと問題が違う方向にズレてないかとも思わないでもない。


「現状、人を1人殺しただけでは死刑にならない」ということに違和感を感じることと


「人を1人殺せば何がなんでも絶対死刑」と望むことには大きなへだたりがあって、


「原則人を1人殺せば死刑だけれども、犯行に至った事情によってその結論は変わりうる」という運用がいいのではというのが死刑を存続させるべきって思う人の率直な感触なんじゃないのかなあとど素人は思うわけですが。


ただ、冤罪とか、裁くのも人だからその運用が難しいんだよとかいろんな問題もあり。


そんでもって、まあどこの新聞社やテレビ局がやった世論調査かで結果なんかガンガン左右されちゃってしまうので世論調査なんていーかげんなもんだとは思うので民意ってなんぞって話にもなりますが。


でもでも少なくとも。

過去あったあまりに非道な犯罪の裁判の被害者遺族が。

命を削るようにして妻と我が子の無念を晴らすべく事件前と別人のようになって闘っていたのを思い出すたび。

そしてその加害者があざけるような手紙を拘置所から自分の知人に書き送っていた報道を思い出すたび。

もし自分が残された遺族の立場に置かれたらと考えて、胸が痛くて痛くてたまらなくなってしまいます。


死刑についてきちんと考えるのであればこの本きっかけじゃないほうがいーだろうなあとは思いました。


虚ろな十字架/光文社
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この間観たビッグフェラーの中で、現実に起こった爆弾テロ事件でなんら罪なく、たまたま居合わせただけで爆弾テロの犠牲になった女性の父親が報復を望まないと表明した実話が登場人物から語られましたが、それともあわせて考えさせられはしました。