先日本屋大賞を受賞されました三浦しをんさんの作品。
(注:この作品での受賞ではありませんが。後で読み返したら紛らわしい)
以前直木賞を受賞されたときにも他の作品を読もうかな・・・と思ってそのままになっていた作家さんのお一人。
なんとなくこれまで自分が読んできた女性作家さん以外の作家さんの本には手が伸びにくいです。
女性作家さんが嫌いかと言われれば、さっと見渡しだけでも、宮部みゆきさんやら、加納朋子さんやら、恩田陸さんやら結構売れてる方の本は家の本棚にあるので嫌いではないのです。
ただ、過去にチャレンジして(私的に)はずしてしまったここに一度もお名前を上げていない作家さんは一人や二人ではなく。それがつまらない作品というわけではなく、私の理解力がついていってない、好みにあわないというだけなのですが。
女性が書くもの(特に恋愛もの)はどちらかというと苦手かもしれません。
なのにどうして今回こちらの本を手に取ったかというと。
ずばりこの作品が「文楽の世界を舞台にしている」から。
おまえは文楽が好きかと言われたら逆なんです。
これまで実は1度も観ていません。
国立文楽劇場があるのにね。大阪には。
能や狂言は何度も行ってますし、好きです。
なのに文楽は食わず嫌いで一度も行かず。
なんでなのか自分でも分かりませんが機会がなかった、というのが一番的を射ているかもしれません。
職場の上部組織が加入している団体から割引優待のチラシとか不定期で届くのですが、何となく中身も見ずに捨ててきました・・・。
最近橋下市長が文化団体への補助金を減らすとか何とかでニュースになってますが、その中に文楽関係の団体も含まれているとかいないとか。
また、三谷幸喜さんが、新作の文楽を書かれたとか。
日本の伝統芸能なのに知らんというのも恥ずかしいかもしれん。
でも、現状では全く興味がもてん。
ならば小説から入って面白そうならイケるんではないかと思い手にとった訳です。
(実は前述の能を観るようになったきっかけはまさに「花より花の如く」という能の世界を舞台にした漫画きっかけだったりします ^^;)
前置きが長くなりましたが。
本作の主人公は健(たける)、(確か)30才。
文楽で義太夫を語る大夫(たゆう)です。
師匠に弟子入りをして10年。
まだまだ修行の身であります。
師匠は銀大夫(ぎんだゆう)。
この世界の重鎮でありながら子供の心をもった(?!)何とも味のある師匠であります。
文楽の舞台は人形をあやつる「人形」さんと、義太夫を語る「大夫」、三味線をひく「三味線」の3つの役割から構成されます。
健は師匠から挨拶だけでほとんど口を利いたこともない三味線の兎一郎兄さんと組むように指示されます。
単発の公演で組むこともあるけれど、基本「組む」ということは、これから先ずーーーと一緒にやっていくということ。つまりは職業上の夫婦のような関係になるということ。
つかみどころのない兎一郎兄さんに戸惑う健。
しかし、師匠の命令は絶対。
さて健はいったいどうなるのか。
ざっと導入はこんなもんでしょうか。
能の世界を舞台にした漫画である前述の「花より花の如く」を読んだときにも、、敷居が高そうに感じる伝統芸能にもそれを継承しようとする若者が沢山いて、その人達は私達と同世代だったりして、舞台の上にいる以外は普通に私達と同じような日常を送っていたりする→非常に伝統芸能が身近に感じるというごくあたりまえのことを今更ながらに気づいたのでした。
この作品の健も読んでいけば順に出てきますが、主人公の健も何も成績優秀で品行方正だった・・・わけではなく。
なぜこの世界に入ったのか、そうしてなぜ今一生懸命頑張っているのか、文楽の世界に身をおきながら決して特殊ではなく、普通に努力して悩んでいる一人の青年の姿がそこにありまして(30才は世間では青年でよいのかどうか分かりませんが、文楽の世界ではまだまだ駆け出し、ということに間違いはなく)。
ぐいぐい引き込まれるわけです。
健のまわりに居る人はみながみな教科書的な人ではなく。
でも非常に魅力溢れていて、そしてどこかあたたかい。
映像化するのは果てしなく困難そうな作品なのでいつか自分で文楽を観て、いまあるぼんやりとした自分のイメージを具体化したいなと思わされました。
著者の三浦しをんさん自身が大の文楽ファンでいらっしゃる。
そういう著者の熱が感じられる素敵な作品でした。
現在三浦しをんさんの文楽に関するエッセイ「あやつられ文楽観賞」を読書中ですが、いや-。オタク道まっしぐらで最初からテンション高い高い。電車の中で読んでてなんど吹きそうになったことか。
私のミュージカルや舞台に対する家族から「アホ」と形容される熱心さに通じるものを勝手に感じてます。
(三浦さんのファンの方には大変失礼しますが、褒め言葉です)
ただ、私の浅いオタクに対して、三浦さんはどんどん踏み込んでいく勉強熱心なオタクで極めてます(笑)。
興味のある演目が国立文楽劇場で上演されることになったら是非文楽を観に行きたい、そう思える本でした。
そして三浦しをんという作家さんも今後注目。