瀬尾さんの本はとってもあたたかい。


読んでいてほっとする。


いつもは結構かわいらしい女の子らしい感じの表紙のイメージ。

この戸村飯店は違った(笑)。

まあ別の意味でかわいいか。


大阪の超庶民的な中華料理店が舞台。

その名も戸村飯店。

この戸村飯店には二人の息子がいて。

飄々としていて要領もルックスもいい兄のヘイスケ。

ボケがうまく単純な性格のコウスケ。

ヘイスケは高校を卒業して小説家になるとして東京へ。

ただ、それが本当の目的なのか。

弟コウスケはそんな兄を見送る。

東京と大阪。

自分が生きる場所はどこなのか、何が自分の人生なのか。


それが超大阪ノリで描かれます。

エセ大阪もの、なんちゃって大阪ではありません。

がっつり大阪のセンスでかかれてます


瀬尾さんが大阪生まれであることを今更知った。

いやこれも読んだかもしれないのに忘れてたのかも。



瀬尾さんの名前だけでぱぱっと買って読み始めたら、あれ、これ前にも読んだことあるんじゃ?と。

1章だけどこか他の短編集か何かで読んだらしい。

さすがにおおまかなストーリーは覚えている。


戸村飯店というタイトル思い出すべきところを気づかない、それが私のニワトリ脳のなせる技。

読んだときにどんだけ感動してもしばらくするとストーリーを結構忘れていることがある。

ヘタすると結末ごと忘れていることがあって、たまに私の頭大丈夫かと思うことも。

でもまあお得なのは1年も寝かせればまるで初めて読むかのような感動が再度味わえることもある。


シャーロックホームズが地球が丸いという事実を覚えておく必要はない、それを今から忘れるよと言った、あの名言。

それは自分の生活に必要な知識ではないから、余計なコトを知識として覚えておくともっと生きるのに必要な知識が入らなくなるからだと。


なのでこの忘れっぽい性格について家族には、私はシャーロックホームズと同じ方法論で生きているのだと伝えてある。

未だ家族には理解されないけど。


話は大いに脱線しましたが。


本作はテンポが小気味よい。

そして登場人物に誰一人嫌な人がいない。

だけど嘘っぽくない。

実際に育った町にはこんな光景があったような気がする。

(子供の時に親と行ってた中華料理店はこんな感じだった)

ラストにはじんわり涙が出た。

悲しい涙ではなくてあったかい涙。

いい本を読んだという充足感。

人に本を薦めるのは難しいけど、これはいいと思う。


よし、これをまた本棚にたてて、数ヶ月寝かせるとしましょう。

数ヶ月後にはまた新鮮な感動が味わえるはず。