東京・品川にある原美術館で現代美術家、杉本博司の個展を観てきました。
ファッション写真とは異なり、文字通り「衣服を彫刻として見る」というのが本作の大きな狙いの1つだそう。
本展では、1920年代から90年代にかけて発表された服の写真15点を展示。服がデザインされた時代によって理想の体型が異なるため、各時代のマネキンを集め、ないものは制作。またモノクロ写真で諧調を美しく表現するためにマネキンをグレーに着色するなど、細かい調整を施したとのこと。
ただの写真展と侮るなかれ。展示の冒頭で、現代美術はとっつきにくいと思っていた私にも、気になって見入って考えてしまうような問いかけがありました。人間が自らのハダカを隠し装飾することの意味とは何か・・・。
~なぜ私達人間は服を着るのだろう。
私達は装い装う。私は私以外の何者かになりたい。いや、私であるためには、私は私を装わなくてはならない。現代文明のただ中では、裸は許されない。私は裸の自分を羞じる。私は着せ替え人形だ。毎日服を着て、私は私を演出する。私が裸でいられる短い時間、それは入浴の時と、子孫繁栄の時、私が子孫繁栄の時へと導かれるためには、夥しい擬態と演出が必要だ。私が私を裸の恍惚へと導くためには、夥しい数の服が必要とされる。その短い子孫繁栄の時が過ぎ去っても、私は私の装いを続けなければならない。
他人はあなたの装いを見て、あなたを認知する。それがあるにしろ、ないにしろ、私は私の知性を装い、私の資産を装い、私の嗜好を装う。
装いは服だけではない。
私の表情、私の仕草、私の目の翳り、それらは自動的にあなたの着るものと連動している。あなたの意志とは係わりなく、あなたの着る服が、あなたの表情を決める。あなたは、あなたの服の気持ちになる。顔というあなたの仮面は、あなたの服に最もふさわしい仮面を選ぶ。
大昔、私達が裸で暮らしていた頃、私達は幸せだった。~
各写真には杉本氏自身によるキャプションや解説が添えられており、各時代における衣服の役割やポイントがすっと入ってくるようになっています。この解説により、より写真を立体的に捉えることができました。壮大な服飾史、精神史としても眺めることができます。
ちなみに、「ブランド」とはその昔、放牧された牛の判別のために牛の尻に焼きつけた刻印のことだったそうです。この他、女性デザイナーが活躍しだした時代背景には、世界大戦により家庭にいた女性たちが人手不足で駆り出されたことがあった等、耳にしたことのある歴史と装い、流行との関係が無機質な表情で紹介されているため、頭の中で静かにパズルがはめ込まれていくようでした。
観賞に疲れたら、館内のカフェにて一休み。
都会のビルの狭間に、こんなにも広々とした庭を前に珈琲を飲める場所があること、驚きです。
【原美術館】
1979年に開館。私邸として1938年に建造された建物は、旧日劇や東京国立博物館を設計した渡辺仁の代表的な作品の一つ。2008年、豊久将三による新照明システム導入など全館リニューアル済。
東京都品川区北品川4-7-25 03-3445-0651 11:00am-5:00pm 月曜休館 入館料1,000円







