台高某所にて。
昨日は台高山脈に存在する未踏の岩壁を試登に行ってきました。
この岩壁はとある谷に存在し、流域面積の大きさから水流があってもおかしくなく、本来ならば大きな滝となって掛かっているはずなのですが、恐らく、この周辺地域の地質的な特徴から地下に流れてしまっているようです。一昨年、この谷を溯行した時に、その大涸滝を目にして以来、密かにこの壁を登攀する夢を抱いていました。
誰にも登られていない岩壁を登るということは、密かな憧れでした。しかし、私にそのような機会が与えられるどころか、たとえ与えられたとしても、その勇気もありません。なので、“試登“という形で、迫れるところまで迫ってみることならできると思いました。
コージと私とで、釣る瓶式で交互にリードを交代し、登ったのは5ピッチで、約120mほど取り付きから高度を上げました。スラブから始まり、チムニーや垂壁、コーナークラックなど、想像以上に多彩なクライミングを楽しむことができました。今まで登ってきた大滝と比べると、全体的に傾斜の強い壁だったと思います。
誰にも登られてないので、むろん、トポなどなく、下から眺めた岩壁の記憶と合わせて、登りながら可能なラインを探っていきました。ボルト連打ならまだしも、結局、弱点はそこしかないという形で導かれていきました。
結果というと、残すところあと30mほど、あと1ピッチという地点で降雨を理由に降りてきました。完登はあと一歩、というところでお預けになったのですが、残されたピッチも決して優しいものではなく、勇気と慎重さをバランスよく持ち合わせてなければ、無事には帰ってこれません。初登とは、そんなに甘いものではありません。
この岩壁の存在を教えてくれたのは、今は亡き川崎さんです。再び挑みにいくかどうかは分かりませんが、このようなスケールの壁を初登するという機会を与えてくれた川崎さんに感謝です。