英国の影の内閣は公職とされ、予算がつき、専用執務室も用意③

 

 前号の最後に「支障があろうとも最善手である『影の内閣』に着手することを望む」と記した。枝野立憲民主党党首はその著書で、2009年~2012年の民主党政権の失敗は「経験不足が根っこにあった」と認めている。ならば経験を積むために「影の内閣」を組織することが最善手であると提言したのだが、枝野党首は2020年9月に、衆参両院で150人を擁する野党第一党の党首になりながら、その著書でも、あるいは記者会見でも「影の内閣」について触れないのは、理由があるのかもしれない。つまり「影の内閣」は民主党、民進党の時、何年か組織したが、あまり効果がなかったとの理由が――。


 私も、「影の内閣」を模した野党の内閣が日本でもいくつか組織されたが、その内閣が「政権運営の経験」と「政策立案能力」を高めたか、と問われれば、「あまり効果がなかった」と思っている。

 

改善・改革の意志はないのか


 その効果がなかった原因を私は次のように考える。議院内閣制を発達させたイギリスの場合、その影の内閣は「議場では内閣が与党席前列に着席するのに対し、影の内閣は野党席前列に着席する」「影の内閣は公職とされ、その運営には予算が計上され、議会内に影の内閣専用の執務室が提供され、政権を握れば内閣となるしくみ」(フリー百科事典)という。これに対し日本の影の内閣には同様の措置・扱いがされていなかった。その措置・扱いの違いが、日本の影の内閣が、その効果を挙げられなかった大きな原因と私は考える。


 枝野党首に問う。民主党の失敗の原因が「経験不足が根っこにあった」とするなら、英国のように「日本の影の内閣」を改善、改革し、組織する気はないのか、と。