顕現後、挨拶もそこそこに すぐに血抜き?をされて慌ただしく大広間に案内された。
案内してくれた二人の刀は、声を掛けても「あぁ」とか「うん」とか返してくるだけで、上の空も甚だしかった。
大広間には、同じように顕現されたであろう刀が多数集まっているようだった。皆一様にそわそわと落ち着かないような気がする。
どういう事なのだろうと疑問に思っていると、大広間の空いた場所に取り敢えず座って待つように指示された。
事情を聞こうにも、案内してくれた刀はすぐに戻って行ってしまったし、その後に何らかのものを持ってきてくれた刀も似たようなものだった。
周りにいた、自分と同じような顕現したての刀達に挨拶し、この状況がどういう事なのかを話したが、特に分かることはなかった。
分かったのは、この大広間で手渡されたものが茶という飲み物で、熱いから気をつけろということだった。もう一つ手渡されたのは甘い和菓子で、茶を飲む前に頂くらしい。そもそもの飲むという事、食べるという事、熱いも甘いもよく分からなかった。要は試しと湯呑みに口をつけたが、勢いよく遠ざけることになった。溢れて手指がビリビリする。これが熱いということか。思わず首をすくめた。
どのくらい待てば良いのか。
茶はすっかり冷えて、すでに腹の中だ。
この広間に何人もの刀が案内されてきて、時々呼ばれて何人かの刀がどこかへと案内されていった。
小さな不安と大いなる疑問が部屋の中に充満しているかのようだった。
そしてそれは突然終わった。
一人、大広間から案内されていく。
その光景がこれまでのものとは随分雰囲気の違うものだった。案内する側の、元々ここにいた刀の雰囲気が、喜びに満ちたような、それでいて深い疑問を抱くような、何とも形容のし難い不思議なものだったのだ。
それからしばらくは、大広間には案内されてくる者は居なかった。案内されてどこかへ行く刀もいなかった。
しばらく、ほんの暫くして。
元々ここにいる刀から説明があった。
主がご病気で、移植が必要なこと。
ドナーが待ちだったところが急変し、直ちに移植が必要になったこと。
そのドナーとやらを、人の身体を持つ刀から選ぶことになったこと。
保管されていた刀を大量に急遽顕現させ、適合者を探したこと。
適合者が見つかったこと。
・・・何一つ意味が分からなかった。
分かるのは、主を助けるために代わりが必要になったという薄ぼんやりとした憶測だけだった。
では。
選ばれていったのであろうあの白い刀はどうなるのか?
ここにいる大量に顕現された自分達は、どうなる??
言わずもがな。
こんなに沢山の刀は一度に不要だろうから、元の空に戻ることになるのだろう。
・・残念だが致し方のない事だ。
選ばれたあの刀は。
そのまま折れるのだろうか。
再び同じように顕現することは出来るのだろうか。
主の役に立つ事は至上の喜びであるはずが、今のこの状況下ではどうなのだろう。
分からなかった。
大広間にいた刀たちは呼び出され、次々に何処かへと案内されていく。
恐らくこのまま元いたところへ還ることになるだろう。
選ばれてここにいられるとしたら、こんな風に顕現されていないだろう。
・・・出来れば、茶というものが『美味しい』と思えることを体験したかった。
案内された先はオレンジ色の世界だ。
