あすくれぴおっす。
今日は珍しく同人誌の考察です。
何かの作品に触れることは日常であり、
PCゲームのレビューも結構な数を書いてきましたが、
考察としてブログの記事にするのは、なんと9年ぶりです。衝撃。
あ、考察といっても、常日頃から考察されている方にしてみたら前菜程度の浅い内容なので
あんまり期待はしないでください。
今回考察したのはこちらの作品。メロンブックスで見かけて買ってきました。
終わりの日記帳 (サークル:ノラネコノタマ 作家:雪野みなと先生)
です。作品は成人向け(要するに、エロマンガ)ですので、未成年の方々は申し訳ありませんが速やかにこちらのページからご退出ください。
成人の皆様のうち、まだ作品をご覧になっていない方は、以下から購入できます。
メロンブックス
紙版 電子版
!この記事はネタバレを含むため、読破後の閲覧を強くオススメします!
ネタバレ回避のため、少しスペースを置きます
それでは参ります。
本の大筋としては、メインヒロイン「さくら」が幼馴染「サトル」の"兄"との子を宿し、
妊娠中に階段から転落する という結末。
なんというバッドエンド・・・・と思っていたのですが、読み終わった後に本を閉じると違和感を感じました。
そう、表紙に開花中の桜が描かれているのです。
ヒロインの「さくら」は、サトルの兄から言うがままに行為を迫られ、妊娠してしまいます。
妊娠後もサトルの兄から行為を続けられ、
そして運命の6月8日、行為中の部屋にサトルが入って来てすべてを打ち明けられます。
衝撃を受けたサトルは泣いて部屋を飛び出し、追いかけたさくらが転落。ジ エンド。
さて、妊娠の発覚は前年の12月。
そして事件が発生したのは6月。
この時点で、さくらの腹は相当なまでに大きくなっています。
階段から転落して、そのまま病院に行ったときの様子がこの表紙になっているのであれば、
桜が咲いているのは不自然です。6月8日もしくは、その直後ということになりますから。
ここで出てきた数々の疑問と、それに対する見解を書きます。
★桜が咲いているが、実は6月?
考察するときには、あらゆる先入観を捨てねばなりません。
6月に桜が咲いている可能性だってあるかもしれません。
調べました。
日本で最も遅い桜は・・・案の定、北海道。
軽く検索した範囲ではありますが、最も遅い桜は根室市で、
桜の開花は5月中旬~下旬とのこと。
つまり、この物語の舞台が北海道根室市で、めちゃくちゃ遅い桜が咲いているシーンを表紙にした
と考えるのは非常に難しそうです。5月下旬には開花時期が終わるので、
まぁ、この年は例年に比べて桜の開花が記録的に遅かった・・・と考えられなくもありませんが、難しいでしょう。
また、6月8日というカットのシーンをご覧いただきたいのですが、紫陽花(あじさい)が咲いている様子が描かれています。
北海道での紫陽花の開花シーズンは7月中旬~8月上旬とのことなので、
仮に北海道根室市だった場合に6月8日の時点で紫陽花と桜が同時に開花しているという設定は非常に難しそうです。
可能性としてはゼロではないのですが、、、根室市民の皆さん教えてください(笑)
というわけで、先入観を捨てた割にはまた拾うことになりますが、
我々の一般的な感覚通り、この表紙の様子は4月前後の春の様子と思われます。
★入院していると思ったけど、そもそもここは病院か?
ベッドはいかにも病院のベッドっぽいですが、
もしかしたら、病院っぽいベッドを自分の部屋に置いている可能性だってゼロではない。
ですが、ここ。
洗面台・・・。
自分の部屋、しかもベッドのそばに、洗面台ってありますか・・・?
ないですね。このあたりから、ほぼ病院のベッド、入院中であることは間違いなさそうです。
★どういう理由で入院しているのか?
気になるのはお腹の様子です。
作中の様子と比較しても、膨らんではなさそうです。
つまり、既にお腹の子はいない ということになりそうです。
そうすると気になるのは入院している理由ですが、これは最終的な結論により分かれてきそうなので後述。
★表情から何か読み取れないか?
この表情の読み取りが非常に難しいです。
絶望し、すべてが終わってしまった、という感じではなさそう。
しかし、どことなく目が虚ろ。ハッピーエンドになったというのは考えにくい気もします。
ここまでの情報をまとめると、この表紙の状況としては
・本州のどこかで、4月前後
・さくらは現在、理由は不明確だが入院している。お腹に子はいない。
・想定される完全なるバッドエンドは考えにくい
このあたりは確実そうです。あとは、いくつかの説を出し、辻褄が合いそうなものを選出します。
***【実は6月8日事件より前の様子が表紙になった説】***
ジ・エンドを読み終えて表紙を見たので時系列的には、
階段から落ちて、流産し、入院した・・・みたいな流れをイメージしがちですが、
もしかすると6月8日よりも2カ月ほど前の状況かもしれません。
6月8日の時点でお腹は大きく膨らんでいましたが、
その2か月前であれば、お腹の大きさは、すくなくとも作中の描写よりは小さいはずです。
このように服と布で覆われているため、腹の膨らみ具合も定かではないことから、
例えば、妊娠中のときに病院を訪れていたワンシーンという可能性もゼロではないはず。
しかしどうでしょう。検診程度はあったとしても、入院までするでしょうか。
しかも、作中では子どもの出産を待ち望んでいる描写は一切なく
「ママになるのは絶対にイヤ」とまで全否定しています。そんななか、果たして検診に行ったりするでしょうか。
妊娠を隠し、病院にすら行っていなかった、と考える方が自然です。
以上から、事件前の4月の様子 という説は否定されそうです。
***【「さくら」と「桜」をかけ、とくに理由はない説】***
なんとなく桜の花を描いた・・・・。それであれば考察は終了しますが、、うーん。
***【敢えて作者が我々を試すような絵を描いた説】***
これは否定したい(笑)。なんらかの意図があったはず。
***【死後の世界だった説】***
最強の逃げ道。階段から転落して死ぬ可能性ももちろんゼロではないですが、
年齢や作中の階段の様子、ベッドにいるさくらが透けてない、点から、死んだ説は考えにくいですね。
まぁ、足が見えていないのでもちろん絶対ということは言えませんが。。
***【流産して、そのままずっと入院し続けていた節】***
流産という点については、あまり争う余地はないと思っています。
もちろん、ゼロひゃくで言えば、あの転落事故で何事もなく無事だったと考えることもできますが、
あれで無事だったとすると、敢えて転落する描写をした点や、それ自体をこの作品の終了点にしたことに
意味を見出すことが難しくなります。
したがって、あの転落事故で流産したということはほぼ間違いがないと考えます。
でも、仮に流産して、そのまま6月から翌4月まで入院し続けることはありえるでしょうか。
術後の経過は確かにみる必要はありますが、正味10ヶ月も入院するのはいささか不自然です。
そうすると、入院し続ける理由とは一体何か?というのと、
入院し続けたのではなく、一旦は退院して、再度入院した の2つが考えられます。
入院し続ける理由としては、階段から転落した際、流産とともに、どこかの身体に重大な損傷が生じた可能性です。
同時に骨折をしたとか、あるいは、半身不随になってしまった、などです。
何度か書いている通り、表紙からはさくらの下半身の様子はうかがえません。
すると、下半身不随になってしまって入院しているという可能性も浮上します。
ところがどうでしょう。不随になった直後なら分かりますが、
1年近くこれが原因で入院し続けるのは疑問です。車いすなどで自宅療養に復帰する方が自然でしょう。
カルシウム不足で骨の回復が平均よりも遅く、時間がかかったという可能性もありますが、圧倒的に不自然。
身体的な理由で長期入院説が否定されるのであれば、
心的要因で長期入院する説が残されます。これはかなり有力と思われますので、最後に残します。
さて、いくつかの説を出し、却下と保持をしました。結果として、最終的には以下の2つの説を出します。
★【流産後の再妊娠、出産説】★
上の説で残していた「入院後に一旦退院し、再度入院した」説の延長です。
再度入院することになり、それが翌年の4月。
時期的に考え、6月に流産し、直後に再妊娠、翌4月に出産であれば、
話の流れとしては非常に自然かつ合理的です。期間で言えばちょうど10ヶ月であり、
平均的な妊娠から出産までの期間と完全に一致します。
では、いったい誰との子でしょうか。
ここでもう一度、病室の様子を見ます。
そう、好きだった幼馴染「サトル」からもらったペンギンのぬいぐるみがあります。
子を宿すとすれば、数少ない本作の男の登場人物である
・サトル
・サトルの兄
のどちらかということになります。そこで見たのが、このペンギン。
もし、流産後に再びサトルの兄に犯されて子を宿した場合、
果たして別の男(=サトル)からの贈り物をわざわざ病室に飾ったりするでしょうか。
しかもここは病室であり、自分で持ってくるというよりは、誰かに持ってきてもらった。
誰に持ってきてもらうか?果たしてサトルが持ってくるでしょうか。
サトルがぬいぐるみを持ってきたのであれば、サトルの兄ではなく、
サトルとの子を宿したと考える方がよっぽど自然です。
前戯描写こそありましたが、サトルとの生殖行為は描写がありません。サトルも否定をしました。
しかし6月8日の描写では、サトルの兄とさくらとの行為を見て、息子さんをすっかり元気にされております。
この点からも、サトル側の能力的にも何ら問題がないことが見て取れます。
そもそも、さくらとサトルはお付き合いをしている関係にあり、いつ性交渉が実行されても不自然ではありません。
そしてこの本のタイトルには「終わり」という文字があります。
何が「終わり」なのか。
「サトルの兄と間で起きた悲劇」からの解放として「終わり」と表現しているのであれば、
サトルと結ばれることによって悲惨な過去とお別れしたことを示すこの表現は実に合理的です。
その一方で疑問も残ります。
そもそもさくらが階段から転落したのは、サトルがショックを受けて逃げ出したのを追いかけたことに由来します。
「裏切り」と「流産」。この2つのショックを受けた状態で、
インターバル期間もほとんどなく、サトルは流産からの退院直後に性交渉に走るでしょうか。
一度誘惑されたのを断ったサトルの性格からして、この流れは非常に不自然です。
また、サトルとの子を授かったのであれば、ママになりたくないという観点からは不測の事態ではありますが、
それでも、超絶最悪のバッドエンド「終わり」ではなく、どちらかというと「始まり」です。
このように考えると、流産直後に再妊娠したとする説を考えるのであれば、
サトルの兄との子を再び宿してしまう可能性が高いといえます。
実際に、鬼畜極まりないサトルの兄の所業を見るに、そうした結末になるのは十分に筋が通ります。
結論として、6月に流産し、その直後もしくはさくらの年齢を考えればもう少し遅い時期に
再びサトルの兄との子を宿し、4月頃に出産。その直後の様子が表紙の絵になった、と考えます。
サトルからもらったぬいぐるみの件が残りますが、
さくらにとっての唯一の拠り所として置いていた という深読みしない落としどころにすれば良さそうな気もします。
★【精神疾患闘病説】★
心的病を患い、長期入院を余儀なくされた という結末です。
精神疾患に陥るのであれば、何がトリガーとなるかです。
サトルの兄からの仕打ちは今にはじまったことではなく、この点に関する精神的ダメージによる入院は今更感があります。
もちろん、積み重ねによって、というのもゼロではないとは思いますが。
サトルの兄からの仕打ちによるものでなければ、
流産してしまっというショック、そして、サトルにすべてが知られてしまったというショック
この2つに起因する精神疾患で入院したという考えが合理的です。
この流れで行けば、タイトルに含まれる「終わり」という一種の決別を意味するワードも理解できることになりますし、
過去を回想しているかのような、そしてどこか虚ろなさくらの「目」も理解できます。
さらに、精神的疾患による場合では入院の期間を明確に定めることが難しく、
流産した6月から翌4月まで入院し続けることを否定する理由も見当たりません。
結論として、6月に流産し直後、精神的な病にかかり、翌4月現在もなお治療中である様子が表紙になった、と考えます。
以上、長くなりました。
最後に結論づけた2つの説のうち、どちらか1つというのは選択するのは難しいですが、
あれこれとモヤモヤした気持ちをこの文章にぶるけることである程度スッキリできたのでよしとします。
もちろん、今回取り上げた説とは全く異なる説もあるでしょう(気づかないだけで、もっと単純な説があったかな!?)から、
ご意見をお持ちの方はぜひコメントをお願いします。
そして、ここまで幅広く考える素晴らしい作品を世に出してくださった雪野みなと先生に感謝いたします。
義浄。