Rh不適合妊娠とは | 産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

 第一線で働く産婦人科専門医・周産期専門医(母体・胎児)からのメッセージというモチーフのもと、専門家の視点で、妊娠・出産・不妊症に関する話題や情報を提供しています。女性の健康管理・病気に関する話題も併せて提供していきます。

 一般にRh(-)といえば、Rh抗原のうち抗D抗原がないことを意味しています。そして、一般にRh不適合妊娠といえばRh(-)の女性がRh(+)の胎児を妊娠した場合を指しています。そこで、今回の記事も特に注意書がない限り、この一般論に準じて紹介していくことになります。

 さて、血液型の種類や分布ですが、人種によって大きく異なります。今回紹介するRh(-)ですが、欧米の白人では約15%にみられるといわれています。しかし、日本人では約0.5%であり白人の1/30程度です。

 では日本人の場合にRh(-)の女性が妊娠すると、どの程度の確率でRh不適合妊娠となるのでしょうか? 

 抗D抗原はメンデルの法則に基づく優性遺伝です。DDおよびDdでRh(+)となります。そして、ddの場合のみRh(-)となります。もし胎児の父親がRh(-)であれば、妊娠女性がRh(-)であっても胎児は必ずRh(-)となるためRh不適後は起こりません。さらに胎児の父親がDdでRh(+)の場合の半分も胎児はRh(-)となるためRh不適後は起こりません。

 したがって、細かい計算は省略しますが約93%でRh不適合妊娠となり得ます。Rh(-)の頻度が高い欧米の白人に比べると、かなり高率でRh不適合妊娠となることが分かります。

 ところで、Rh(-)の女性が抗D抗原に暴露されて感作され抗D抗体を有するようになる二大原因は輸血と妊娠です。もちろん輸血や妊娠がなくても感作される可能性はあります。

 輸血に際して抗体スクリーニングやクロスマッチが行われるようになった現在、輸血による抗D抗原への暴露は激減しました。しかし、抗D抗原以外の他の赤血球抗原についてはマッチングが行われていないので、輸血による感作の可能性はあり得ます。

 妊娠周辺での抗D抗原への暴露は管理法がある程度確立してきた現在では予防が可能ですが、輸血と同様、抗D抗原以外の他の赤血球抗原については感作の可能性を全く予防できません。

 次回は、このRh不適合妊娠の管理法について詳しく紹介することにします。


人気ブログランキングへ

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村