羊水過少の症状と合併症 | 産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

 第一線で働く産婦人科専門医・周産期専門医(母体・胎児)からのメッセージというモチーフのもと、専門家の視点で、妊娠・出産・不妊症に関する話題や情報を提供しています。女性の健康管理・病気に関する話題も併せて提供していきます。

 今回は羊水過少に伴う症状や合併症について見ていくことにします。

 羊水過少の症状は妊娠週数に比してお腹が小さいということのみです。羊水過多と違って羊水過少にはお母さんを苦しませる症状はありません。

 ところで、通常では胎児は羊水によって保護されたり、成長が促進されたりしています。このため羊水過少になるとこれらの機能が失われることとなり、様々な合併症を引き起こすことになります。

A 臍帯の圧迫:羊水が少ないと胎児と胎盤をつなぐ臍帯が、胎児自身によってあるいは胎児と子宮壁に挟まれて圧迫されます。その結果として、臍帯の血流障害を引き起こします。これは胎児機能不全いわゆる胎児仮死につながります。

B 子宮壁による圧迫:羊水過少では胎児にとっての十分な胎動空間がありません。また、程度によっては胎児の呼吸様運動も妨げられます。その結果として、胎児に四肢の変形・関節の拘縮・肺低形成を引き起こします。

C 羊膜との密着:羊水過少では羊膜と胎児が常に接触していることになります。その結果として、羊膜癒着・羊膜索症候群につながることがあります。

D 子宮内胎児発育遅延・先天奇形:前期破水によらない羊水過少では胎児が子宮内胎児発育遅延であったり、先天奇形を有しているケースが多々あります。

E 分娩時の異常:羊水過少では分娩時に微弱陣痛の原因となります。これによる遷延分娩が起こりえます。また、分娩経過中の臍帯圧迫による胎児機能不全が高頻度で起こります。前期破水による羊水過少ではこれ以外に常位胎盤早期剥離の原因となりえます。

 羊水過少の合併症についてみてきましたが、このうち胎児の肺低形成は胎児の予後を左右する重篤な疾患です。そこで、胎児の肺低形成のメカニズムについて少し詳しく解説しておきます。(もちろん先天奇形もそうですが、こちらは原因なので別の機会に取り上げます。)

 長期間の羊水過少は①子宮壁による圧迫のため胸郭や肺の伸展障害を起こします。②羊水の気道流入停止により胎児の呼吸様運動が停止します。③肺胞液が羊水中へ流出し肺の内圧形成が不可能になります。これら①~③により胎児の肺低形成が起こります。高度な肺低形成は不可逆的で治療が不可能な疾患であり、出生後には呼吸不全により死亡します。


人気ブログランキングへ

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村