いきなりですが、妊娠高血圧症候群の根本的な治療法はターミネーション(妊娠の中断・終結)しかありません。医学・医療が発展を遂げた現在においても、妊娠高血圧症候群そのものに対する効果的治療法はないということになります。入院安静や食事療法・高血圧の薬物療法などはすべて対症療法にすぎないのです。
そのため、母体の安全を優先としながらも、適切な分娩時期を模索・決定していくことが、妊娠高血圧症候群の管理の主体となります。適切な分娩時期を模索していく中で、必要に応じて病態による母体の危機を回避するために対症療法が行われます。
まずは妊娠高血圧症候群におけるターミネーション(妊娠の中断・終結)の適応について説明します。
A)母体側因子
①入院安静・食事療法・薬物療法に抵抗して、症状が不変あるいは増悪を認める場合
特に重症高血圧(160/110mmHg)以上が2週間以上持続する場合は注意が必要です。
②妊娠高血圧症候群にともなう合併症を認める場合
子癇発作・常位胎盤早期剥離・新規の眼底出血・胸水あるいは腹水の増加・肺水腫・頭蓋内出血・HELLP症候群を認める場合があてはまります。
③腎機能障害が重症である場合
GFR50ml/分・血中クレアチニン値1.5mg/dl・尿酸値6mg/dl・BUN20mg/dlを正常の上限として総合的に判断することになります。
BUN/クレアチニン比:10以下・乏尿:300ml/日以下または20ml/時以下・蛋白尿5g/日以上・血尿が持続する場合は注意が必要です。
④血液凝固異常がある場合・血行動態障害がある場合
血液濃縮症状やDICを認める場合、あるいはDICスコアの上昇を認める場合があてはまります。
Hct40%以上・血小板10万以下・AT-III70%以下の場合は注意が必要です。
③と④の数値は絶対的なものではありません。経時的に変化をみて増悪傾向が認められる場合に適応と考えます。
B)胎児側因子
この場合には胎児が胎外で生活可能であることが前提となります。
①胎児発育停止(抑制)
妊娠28週以降で胎児発育が2週間以上みられない場合があてはまります。
②胎児機能不全
NSTでnon-reassuring patternである場合やbiophysical profile scoreが4点以下の場合などがあてはまります。胎児血流評価による胎児血行動態の評価も参考になります。
③胎児胎盤機能の悪化
biophysical profile scoreが6点以下である場合や羊水量の減少がみられる場合があてはまります。
妊娠32~38週での尿中E3が10mg/日以下・随時尿中E3/クレアチニン比が10以下・血中HPLが4μg/ml以下である場合もあてはまります。しかし、尿中E3・血中HPLが臨床の場面で用いられることは激減してきています。
ターミネーション(妊娠の中断・終結)の最終決定は、母体因子・胎児因子を総合的に判断して決める必要があります。
ターミネーションの方法は、母体や胎児の状態によって決定されます。帝王切開が必要となる場合が多いと思われますが、経膣分娩が可能である場合も少なからずあります。
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