不妊治療の光と影 part1 | 産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

産婦人科専門医・周産期専門医からのメッセージ

 第一線で働く産婦人科専門医・周産期専門医(母体・胎児)からのメッセージというモチーフのもと、専門家の視点で、妊娠・出産・不妊症に関する話題や情報を提供しています。女性の健康管理・病気に関する話題も併せて提供していきます。

 今回は周産期センターの第一戦で働いていて常日頃から問題に思っていることを書いてみます。それは、不妊治療と周産期医療との関係についてです。

 不妊症とは、夫婦が妊娠を希望し2年以上性生活を行っているにもかかわらず妊娠に至らない状態をいいます。晩婚化の流れを受けて期間は2年ではなく1年で不妊症と考え検査や治療を開始するという考え方もあります。

 不妊治療、特に体外受精・顕微授精などの生殖補助技術(ARTと略します)の進歩は多くの不妊患者さんに福音をもたらしました。

 不妊症には様々な原因があります。男性因子が25%、女性因子が50%、双方に問題がある場合が25%程度といわれています。そして全夫婦の10~15%が不妊症であるといわれています。不妊治療を行わなければ決して子供を授かることがなかったであろう夫婦が、不妊治療を受けることで子供を授かることができる世の中になりました。これはこれで、とても喜ばしいことと思います。少子化の世の中において出生率向上にもつながってほしいものです。

 かつて多くの不妊治療は排卵誘発剤を使用して性交渉のタイミングをあわせるなど、自然の妊娠を助けるものでした。しかし、ARTは女性の体内から卵子を取り出し、体外で受精させて再び子宮内に戻す方法です。そのため生殖補助医療ではなく生殖補助技術といわれています。もちろん、このARTのおかげで不妊患者さんの妊娠率は大きく向上しました。こうした技術がなければ子供を授からない夫婦もいるわけで、これもまた子供を待ち望む夫婦にとっては福音でした。

 また、今や全出生児の10%程度が不妊治療による妊娠であり、2%弱がARTによる妊娠と言われています。ARTでの妊娠だからと言って後ろめたい思いをすることは全くないのです。ARTも市民権を得たといえるのでしょう。

 ここまでは不妊治療そしてARTの光の部分です。

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