妊娠後半期における出血は妊娠中の合併症としてとても重要です。なぜならば、本邦における妊産婦死亡の30%以上は出血関連の原因だからです。そして、母児の生命を脅かす可能性がある出血性疾患の代表といえば常位胎盤早期剥離と前置胎盤でしょう。そこで、新たにテーマを設けて前置胎盤について数回に分けていろいろと書いてみたいと思います。
正常の妊娠では胎盤は子宮体部に付着しています。
前置胎盤とは受精卵が正常の着床部位(いわゆる子宮体部です)よりも下部の子宮壁に着床し、このために胎盤が子宮下部の開大部に形成されて、内子宮口の一部を胎盤が覆う状態をいいます。上の図を見てもらうと一目で違いが分かるかと思います。
前置胎盤は古典的には胎盤が内子宮口を覆う程度によって分類されています。
全前置胎盤:内子宮口が完全に胎盤に覆われている状態
部分前置胎盤:内子宮口の一部が胎盤に覆われている状態
辺縁前置胎盤:胎盤の辺縁が内子宮口に達しているあるいは接している状態
分かりやすくしたものが左の図です。ただし、この分類はある程度開大した子宮口と胎盤の位置関係に基づくものです。そのため、診察・検査を反復した場合には診断が変化することもありました。
現在では子宮口が開大する前、つまり内子宮口が閉鎖した状態で超音波検査により診断されます。そのため全前置胎盤と辺縁前置胎盤の2種類に分類され、部分前置胎盤という言葉は使われない傾向にあります。
分類上は前置胎盤に含まれませんが、前置胎盤と類似した所見を示すものに低位胎盤があります。低位胎盤とは、胎盤の辺縁は内子宮口にかかっていないものの、内子宮口のそばにある状態(内子宮口から胎盤まで2cm以内)とされています。
なお、本文はオリジナルのものですが、画像中に使用しているイラストは“病気がみえるシリーズvol.10の産科”から引用しました。
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