先日,iTunes Storeの映画棚の中を,2時間近くもうろうろうろうろしておりました。いくつか食指が動くものはあったものの,決め手がなく,行ったり来たりをしておりましたところ,この作品に行き着きました。
2005年ですから,13年も前に公開されていた"Imagine Me & You"(邦題は「四角い恋愛関係」)というタイトルの作品でした。
「四角い恋愛関係」のことを,ついつい「四角い三角関係」と呼称してしまいがちですが,四角が同時に三角でもあるという関係とは,一体どんな状態でありましょうか?
おそらく今までに見た映画の中でも,あらゆる面で最高強度の出来の作品であろうと思いました。どうして今までこの映画の存在に気がつかなかったのか,今になってたいへん不思議に思う次第です。
自分の結婚式の入場の際に,花係の女性とほんの数秒間,目が合ったばっかりに,それまで感じたことのない全く異なる身体感覚と感情の迸りに翻弄されてしまう女性のことを描いておりますが,その過程の描き方が何とも絶妙です。
おそらく,花係の女性のほうは,目が合った瞬間に,相手が探し求めていた対象であることを直観的に感じるのですが,同時に自分とは決して交わることはあり得ない相手であることに気がつき,その感覚を少なくとも表面上は封印します。
一方の新婚の女性のほうは,最初は自分が感じている感覚が何なのか把握できない状態に陥りますが,その女性と関わる中で,それが夫に対して感じる感覚とは,全く異なる種類と強度の感覚であることに気づき,自分の思惑とはほぼ逆に,後戻りできない状況へと,「止められない力」によって迸り落上して行きます。
二人の女性Rachel(演:Piper Perabo)とLuce(演:Lena Headey)が,くっつきそうでなかなかくっつかない,けれど最後には,というその過程の描き方が,何とも素晴らしいくらいに絶妙です。
「快感」と「快感でないもの」に対する身体感覚は,ほんの数秒間で,あたかももう一つの別の銀河系へと瞬時に移動するかの如く変換することがあり得ることを,この映画を見て痛感しました。
Luceが自分たち二人のことを,「まるで双子ね」と言っていますが,見た目はさほど似ているわけではありません。
ところが,この部分を見ていて,ついつい,中山可穂さんの小説「感情教育」の那智さんと理緒さんのことを思ってしまいました。しかも,Rachelは初めてLuceと目が合ったときのことを,夫に対して,「前世で会ったのかしら?」と回想しているのですが,この辺りも,「感情教育」の最後で,那智さんが理緒さんに再会する直前の言説を思い出してしまったとです。
ちなみに,レイチェルの両親,Tessa(演:Celia Imrie)とNed(演:Anthony Head)のやり取りも,たまらんくらいに絶妙で,たまりません。