足を動かす。前へと進む。
生まれる風は自分が作り出したもの。
風はこうして出来るものなの?
足を止める。
それでも髪は揺れるし。コートは翻る。
全てを撫でる風は、貴方にも等しく。
草木を擽り、波を遊ばせ。
頬を撫でる風の声を聴く。
一瞬の出逢いを噛み締める。
今しか出逢えない風の声を聴く。
そんな時間があっても良いのかも知れない。
例えば寂しい夜を。
悲しい朝を。
むなしい夕暮れを。
何度も何度も独りで耐え抜いて。
こうして人は強くなっていく。
強くなって硬くなって。
気付いたら腰も曲がらないで。
腕も上がらないで。
冷たくなって。