一人の刺客が、首をかしげた方の男へ、「コナクソ」と叫びながら、刀を抜き打ちざまに前額部を払いました。
首をかしげたのは坂本龍馬。
龍馬の頭から脳漿が飛び散りました。
この脳漿と血痕が、龍馬の後ろに掛けてある、先ほど板倉より贈呈された掛軸に悲劇の後を残します。
驚いて屏風の陰に置いてあった刀をとろうとした中岡も背中を斬られ、龍馬はだるまのようにふくらんだ身体を動かし、床の間に掛けてあった刀をとろうとして背中を向けた所を斬られます。
さらに振り向きざま、にぎった刀で鞘ごと防いだが、真っ向から降りおろされて致命傷を負います。
龍馬は斬られながらも、中岡を心配し、なお中岡を変名の石川で呼ぶ心遣いをしたといいます。
しかし、背中を斬られた中岡は、間に合わずに小太刀で防ごうとしましたが、下げ緒をぐるぐる巻きにしていて抜けず、抜こうとしている間に、腕、肩、胴、股など十二箇所を斬られます。
刺客の一人が「もうよい、もうよい」と言いました。
「もうよい」とは、止めを刺さなくとも龍馬と中岡が死ぬと判断したという説と、十三か十四ほどの歳の給仕が前の机に頭を突っ込み平伏していたので、刺客の一人が斬ろうとしたところ、他の刺客が「もうよい」と子供ゆえ、そのまま見逃したと言われている説があります。
この子供は、ひょっとしたら軍鶏肉を買いに出ていた峰吉が戻り現場に出くわしていたのかも知れません。
刺客の一人が、血だるまになった龍馬に「何か申し置くことあらば承ろう」と言うと、「言い残すことは沢山あるが、汝らに言うべきことは何もない。思う存分殺せ」と言ったといいます。
この悲劇の模様は現場検証記録や瀕死の重傷を負いながらも、二日間生き延びた中岡慎太郎の証言記録などにより現在に伝えられています。
刺客が「コナクソ」と叫び一刀を龍馬に浴びせてから一瞬の出来事だったそうです。
北辰一刀流で剣名を轟かせた坂本龍馬は、この動乱の時代に幾多の修羅場をくぐり抜けながらも、その生涯においてただの一度として、その剣を抜いて人を斬り倒したことが無かったと言います。
刺客たちの姿が消えると、龍馬は脳が飛び出ながらも倒れていた体を支えて立ち上がり、中岡に「しっかりしろ」と声をかけ、八畳手前の六畳の明かり取りの欄干から、一階にいる主人に向かって叫びました。
「新助、医者を呼べ」
龍馬は自分よりも中岡の方が重傷だと思ったのだそうです。
しかし、一階の刺客が去るやいなや新助は土佐藩邸に知らせに走っており、家族らはまだ刺客が二階にいるかと思い、震えていました。
このとき龍馬の血が一階に滴り落ち、初めて龍馬は自身の重傷に気が付きました。
部屋に戻った龍馬は、中岡に「わしはだめだ。脳をやられた」と声をかけると、ドッと倒れ、さらに言いました。
「刀はないか、刀はないか」
そう呟きながら、龍馬は動かなくなりました。
中岡は切断寸前の左足を引きずりながら、助けを求めようと八畳間を通り抜けて物干し台に出て、そこで倒れました。
龍馬は即死に近かったそうです。
首をかしげたのは坂本龍馬。
龍馬の頭から脳漿が飛び散りました。
この脳漿と血痕が、龍馬の後ろに掛けてある、先ほど板倉より贈呈された掛軸に悲劇の後を残します。
驚いて屏風の陰に置いてあった刀をとろうとした中岡も背中を斬られ、龍馬はだるまのようにふくらんだ身体を動かし、床の間に掛けてあった刀をとろうとして背中を向けた所を斬られます。
さらに振り向きざま、にぎった刀で鞘ごと防いだが、真っ向から降りおろされて致命傷を負います。
龍馬は斬られながらも、中岡を心配し、なお中岡を変名の石川で呼ぶ心遣いをしたといいます。
しかし、背中を斬られた中岡は、間に合わずに小太刀で防ごうとしましたが、下げ緒をぐるぐる巻きにしていて抜けず、抜こうとしている間に、腕、肩、胴、股など十二箇所を斬られます。
刺客の一人が「もうよい、もうよい」と言いました。
「もうよい」とは、止めを刺さなくとも龍馬と中岡が死ぬと判断したという説と、十三か十四ほどの歳の給仕が前の机に頭を突っ込み平伏していたので、刺客の一人が斬ろうとしたところ、他の刺客が「もうよい」と子供ゆえ、そのまま見逃したと言われている説があります。
この子供は、ひょっとしたら軍鶏肉を買いに出ていた峰吉が戻り現場に出くわしていたのかも知れません。
刺客の一人が、血だるまになった龍馬に「何か申し置くことあらば承ろう」と言うと、「言い残すことは沢山あるが、汝らに言うべきことは何もない。思う存分殺せ」と言ったといいます。
この悲劇の模様は現場検証記録や瀕死の重傷を負いながらも、二日間生き延びた中岡慎太郎の証言記録などにより現在に伝えられています。
刺客が「コナクソ」と叫び一刀を龍馬に浴びせてから一瞬の出来事だったそうです。
北辰一刀流で剣名を轟かせた坂本龍馬は、この動乱の時代に幾多の修羅場をくぐり抜けながらも、その生涯においてただの一度として、その剣を抜いて人を斬り倒したことが無かったと言います。
刺客たちの姿が消えると、龍馬は脳が飛び出ながらも倒れていた体を支えて立ち上がり、中岡に「しっかりしろ」と声をかけ、八畳手前の六畳の明かり取りの欄干から、一階にいる主人に向かって叫びました。
「新助、医者を呼べ」
龍馬は自分よりも中岡の方が重傷だと思ったのだそうです。
しかし、一階の刺客が去るやいなや新助は土佐藩邸に知らせに走っており、家族らはまだ刺客が二階にいるかと思い、震えていました。
このとき龍馬の血が一階に滴り落ち、初めて龍馬は自身の重傷に気が付きました。
部屋に戻った龍馬は、中岡に「わしはだめだ。脳をやられた」と声をかけると、ドッと倒れ、さらに言いました。
「刀はないか、刀はないか」
そう呟きながら、龍馬は動かなくなりました。
中岡は切断寸前の左足を引きずりながら、助けを求めようと八畳間を通り抜けて物干し台に出て、そこで倒れました。
龍馬は即死に近かったそうです。