次の日も、その次の日も
おじいさんは田んぼの細道にいた。
そこで俺たちは話をする。出会ってまだ少ないボケてしまっている老人に、深刻な家族の話をするなんて酔狂な話だと自分でも思う。
でも、おじいさんは面白い。ボケボケなのに、話には筋が通っているというか…
くれるアドバイスは的確だったりして、俺の身の回りにはいないタイプだ。
「お前も苦労人なんじゃなあ。」
「そうなんだよ!ほんとにさ、困っちゃうよ、母さんはヒステリックだし。父さんはなに考えてるか分からないし。
妹は…俺にないもの、もってるし。」
俺と妹は、仲が悪いわけじゃない。週に3回は見舞いにいってるし、正直、両親よりも会話が弾む。
あのくったくのない笑顔で「お兄ちゃん」なんて呼ばれてしまうと
もやもやした気持ちもふっとんでしまう。
けれど家に帰り、あの暗くて重い、牢獄みたいな家に帰ると
どうしても嫌な気分になる。俺はそんな自分が嫌いだった。
だから、妹に言いたい。
そんな顔で俺に笑いかけるな。お兄ちゃんは、お前みたいに綺麗じゃないんだ。
「そうじゃ、お前にいいものをやろう。」
かみさまはそういうと、いつも着ている(ちなみに同じ服)のポッケから
蒼い石を取り出した。
空の青と、田んぼの緑と、服の白と、石本来の透明が合わさって美しい蒼を作り出している。
「おじいさん、これなに?」
「これはなー、『かみさまのいし』なんじゃよー。」
「かみさまのいし?」
「そう、これを握って願いごとを頭のなかで考えるとなー。それは本当になっちまうんだ。
でも『世界征服がしたい!』とか、そういう幼稚でくだらないものは無視される。
だから神様の『石』なんじゃが、神様の『意思』なんじゃよ。
なにを叶えてやるのかは、すべて神様次第なんじゃ」
「ふーん!ありがとう!」
そのとき、俺は
神様なんていないと思っていたから
あんなことが起こるなんてまったく思いもしなかったんだ。