泡沫の雪

泡沫の雪

ウェブリブログからのお引越し。

独断と偏見による本の感想を連ねるだけのブログ。
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・「鬼門街」 
・ジャンル:ミステリー、人外
・絵柄・ストーリー・お勧め度:★★



[高校2年の川嶋マサトは、ラーメンの食べ歩きが趣味の平凡な学生だった。しかし、音楽を聴きながら寝落ちしたマサトが翌朝、何者かに襲われた母の惨殺死体を見つけてから、平穏だった日常は壊れた。元ヤクザで長距離トラックを運転していた父は清掃業に転職し、父子2人での生活に慣れようとするも、母を失った哀しみと、マサトの中に残る後悔と罪悪感は消えることはなかった。そんな中、マサトは2人の暴漢に襲われ、瀕死の重傷を負わされる。死の間際のマサトの前に”鬼”が現れ、取引を持ちかけるが…。]



正義の味方というべきか、桃太郎に憧れたマサトが鬼と取引することになったのは、大層な皮肉だなと思わざるを得ない。
それまでは本当に、多分どこにでもいる学生の1人でしかなく、毎日同じ日が続くことを信じて疑わなかったであろう。それは、このマサトに限らず、今、生きている誰もが思っていることだろうと思うが。
鬼の力を手に入れ、母の仇を探しつつ、鬼の力を利用して悪事を働くものたちを次々と倒していっている、その行為自体は、桃太郎の鬼退治と何ら変わりないかもしれない。ただ行動の善悪があるだけで、自身のものではない力を利用していることは前者も後者も、違いはないのであるが。
”鬼門街”というだけあって、鬼がやたらいるわけだが、自分が地獄行という行く末より、それだけ取引に応じた人間がいるということは驚くことではない。
マサトの場合は生死がかかってたので、選択の余地はなかったかもしれないが、もし、自分にない力を手に入れられると囁かれたら、それが利用できるものであるなら、どれほどの人間がその誘惑を退けられるかという話だ。
2部の方では、母の仇が登場すると同時に動機も明らかになり、そしてマサトの父まで手にかけられる。被害者からすれば、自業自得というのかもしれない。だが、マサトからすれば理不尽でしかないわけで。
読んだ話数の時点でマサトは新たなトラブルに巻き込まれてたりするのだが、どういう結末を迎えるのか、気になる作品である。