夕方に雨が降るかもしれないと
天気予報が教えてくれていた
にわか雨かと楽しみにしていたのだが
残念なことに予報が告げた時間は
ただ少し曇っただけでその後も晴れた
今日は結局雨が降らなかったと
少しだけ寂しい気持ちになっていたら
空が光り始めゴロゴロと雷が轟いていた
雷が好きなぼくは酷く胸が踊った
窓を開け、そこへ座り、電気を消し、
ただ空が光り雷鳴が響くのを待った
雷を眺めるのが好きなのだ
程なくしてすぐに雷が止んでしまい
また少し寂しい気持ちになっていたら
しとしとと控えめに降っていた雨が
激しさを増しベランダの柵を叩いた
ポツポツ、コツコツ、ザァザァ
バタバタ、カンカン、ピシャピシャ
段々と強さを増す雨は
外の音を全て搔き消しながら
弾丸のように降り注ぎ世界を洗った
酷く叩きつけられる雨音は
大変心地良く疲れた心身を癒した
「あともうひと息、頑張りなさい」
そう励ましてもらった気さえした
これは激励の雷雨なのだと
勝手に思っては心が安らいだ
こういう時は自己解釈でいいのだ
都合のいいように世界を回せ
しばらくして静かに雨も止み
あっという間に雲が切れ空が見えた
灰色がかった薄く広がる雲のあと
向こう側からモクモクとした白い雲が
のそりのそりと顔を覗かせた
巨大な金魚にも見えるそれは
ゆっくりその全貌を表し始めた
ぼくはその巨大な存在に
見つからないよう
見つからないようにと
ただ静かに身を潜めて
形を変えながら流れていく様を
部屋の中からじぃっと眺めていた
途中で目が合ったような気がして
少しだけ恐ろしい気持ちになった
映画やアニメの世界みたいに
突然巨大な生物が現れた時なんかは
きっとこんな気持ちなのだろう
死ぬ前に目の当たりにしたい
巨大な金魚のような白雲も
しばらくして細々と切れてしまい
非日常的で愛おしいほんのひと時は
一時間も満たぬうちに閉幕となった
すっかり体は芯から冷えてしまい
早く初夏にならないかなぁと
未来を待ちながら窓を閉めた
春雷に出会えるとは幸運だった
もうひと踏ん張り頑張れそうである
▼ 余談
ぼくは米津玄師さんが
それはもう大好きなのだけれど
「春雷」という美しい曲があるので
よかったらぜひ聴いてみてほしい
MVも当然かっこいいのである
綺麗で鮮やかで儚げで美しい
何度見ても心がギュッとなるし
歌詞が特にたまらなく好き
今日みたいな日はこの曲を思い出す
春雷、今日はいい日だなぁ
_
