「サンクチュアリ -聖域-」公開日:2023年05月04日 日本

最近、母は夕方にNHKの相撲番組を見ている。

ぼくにとって、相撲は好きになれない格闘技だった。

相撲の身体づくりは、あまりに日常に不必要な肉で身体を固める。テレビでの試合のスローモーション場面でわかる力士の身体の肉がブヨンブヨン揺れている様などが苦手だった。

そんな拒否感があるぼくが見てもNetflixの「サンクチュアリ -聖域-」というドラマは本当に面白かった。若手力士“猿桜”こと、小瀬清という名の元ヤンキーの九州男児が主人公。「土俵にはね、金・地位・名誉、全部埋まってるんだよ」というピエール瀧演じる猿将親方の甘い言葉に乗せられて、相撲部屋に入門する事を決める。

演じるのが、初めて主演を任された元プロ格闘家の一ノ瀬ワタル。ヤンキー映画『クローズ ZERO II』(2009年)で俳優デビューして以降、出演作を重ねている役者でそれまで知名度は低かったけれど、このドラマでの超はまり役で一気に有名になった。

去年の5月にNetflixで世界独占配信されると、1週目から日本国内で1位を記録し、公式グローバルTOP10にランクインするほどの勢いがあった。

アメリカ時間の5月17日に発表された2週目集計ではグローバルTOP10ランキング6位に上昇。トルコ、キプロス、クウェート、ギリシャ、香港、日本の6カ国・地域でTOP10入りし、熱が広がったという。

地上波では流せないだろうと思う表現も多々あるが、昔、懐かしい「巨人の星」を始めとした梶原一騎のスポコン漫画風のスパイスも効いていて、熱中してみることができた。

オープニングがまたシャープで、力士がパンと手を打つ音と行司の声と力士の四股の映像がうまく噛み合っていて、映像のこだわりもまたドラマの期待をますます盛り上げる。

相撲部屋の先輩からの後輩に対する理不尽な暴力もきちんと描いており、このドラマを見た後では相撲部屋に入門しようと思う人が減るのではないかと心配になるほどだ。

主人公・清の母親は、父親が経営する寿司店の経営がうまくいかなくなってから、男を作り、父親が倒れてからは「入院費はおまえが相撲で稼いで払え」と、命じる。母親は黒人の彼氏を作って、夫や息子の事はもはや眼中にない。男に狂い息子にたかる母親(余貴美子)と寝たきりで入院の父親、そんな家族の背景を背負いつつ、清は相撲でのし上がっていく。

神田伯山も、「問わず語りの神田伯山」というラジオ番組で「こういうドラマが見たかった」と、絶賛していた。

但し、相撲好きの母親にこのドラマを見せたら「なんだか表現がどぎつくてイヤ」という感想が返ってきて、やはりこのストレートな表現も合う人、合わない人がいる事を実感。

ところで、ドラマはまだ続編があるのでは?と思わせる終わり方だった。でも、役者陣もスタッフも撮影があまりに大変だったので、もう2度とやりたくないと言っているとの事。

「楽しみにしているファンは多いでしょうが、『サンクチュアリ』の続編制作はありえないでしょうね……“絶対に不可能”だともっぱらです」

そう声を潜めて話すのは、ドラマ制作会社関係者。

「『サンクチュアリ』の監督は、岡田准一さん(42)主演の『ザ・ファブル』シリーズなどで有名な江口カンさん(56)ですが、江口監督がよくも悪くも情熱が凄まじい方。求めるクオリティが極めて高く、出演者も、スタッフも、全員が悲鳴を上げる超過酷な現場だったといいます。それに多くの人がついていけず、スタッフも最終的にプロデューサー以外全員変わったのでは、と言われていますね」

その事情はわかったうえで、ドラマのファンとしてはあえて続編を期待してしまうが・・・・・・・・。

参照:『サンクチュアリ』の続編制作が「絶対不可能」な重い理由!